ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】
ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー
一瞬の硬直から摩耶は悠の首に回した腕に力を込めて一回転した。さながら鰐のデスロール。一気に絞り上げ悠の意識を遮断にかかった摩耶だったが悠もその回転合わせて大きく身体を振るわせた。身体が仰向けになり摩耶が背面に動く形になった瞬間、悠は跳ねあがって摩耶を押し潰しにかかるが、そう来ると分かっていたのか摩耶は悠の首から腕を解いて脱出する。
残ったのは自分から地面に背中をぶつけた男、しかし、硬い床に身体をぶつけているにもかかわらず、その反動を利用して一気に身体を起こし上げた。
だが、目の前には既に立ちあがっている摩耶の姿があり、ほぼほぼゼロ距離という超密着状態で悠の拳に手を重ねてピタッと動きを止めた。
そして、同時に悠も動きを止めてしまう。力で制されているわけでもなく、技をかけられているわけでもない。
それにもかかわらず二人の男はなぜか動かなくなったのだ。
「「「……」」」
静止状態が30秒も経たないうちに観客たちのヤジが飛び交い始める。
「……なんだ?動かねぇじゃん。」
「休むな動けーー!!」
「殺し合えーー!!」
「達人気取りかボケ!!」
「休憩なら家でしろ!!」
「くたばれ摩耶ーー!!」
「何が天才だクソガキー!!」
「動け動け動け動け!!」
「テメーもさっさと動けや悠!!」
「動けねぇなら仕合に出るんじゃねえよ!!」
「闘技仕合舐めんな!!」
鈴猫「なにこれ、酷い…」
大久保「はー…ちょっと膠着しただけで荒れるのー最終日でテンションおかしなっとるな。」
「……二、三人殴り殺して黙らせるか?」
暮石「無視無視「消費者」はこんなもんだって。」
西品治「……ッッ」
何を考えている!?ダースチョークを簡単に外された。……いや、「敢えて外した?」何かの布石か……?じゃあ、この膠着はなんだ?
野次が飛ばされようと未だ二人の闘技者は動かない。
一般の観客たちとは違い、VIPルームで観戦している闘技者たちは冷静に仕合の運びを分析していた。
窈「上手く誘導されたね。攻撃は全て捌かれているし、仕合をコントロールしているのは摩耶君だ。」
関林「俺は逆だと思うぜ。どの局面でも積極的に攻めているのは悠の方だ。摩耶もカウンター的に返してはいるが、攻めには消極的ともいえる。怪我もあるんだ。いつまでも凌げるはずがねえ、勝つためには自分から攻めねぇとダメだ。」
末吉「……」
いや。小鳥遊(窈)さんが正しい。場を支配しているのは、摩耶君だ。
「Boooo!!」
「お前ら死ね!!使えねぇんだよボケカス!」
野次を飛ばしている観客の背後から一人の男が身を乗り出すと一言共に拳をひと振りした。
「退け。」
軽く振った拳が観客の横っ面を打ち、余ほどの威力なのか止まること無く隣で一緒に騒いでいる男にぶつかった。
突然のことにそこら一帯のヤジが止んだ。
現れた男を見て観客たちは息を飲んだ。
「ッッ……ら……」
息をするように人を殺す【魔人】魏雷庵がそこに立っているのだ。
雷庵「クカカッ!そうそう静かにしてりゃいいんだよ。」
顔を腫れさせ鼻や口から血を流すヤジを飛ばしていた男二人を無理やり座っていた席へ戻して両方の肩に手を回した。
「「ひっ」」
雷庵「よし。お前らに質問だ。どう思う?」
「へ?ど、どうと言いますと……」
「仕合のことでしょうか?」
雷庵「質問で返すな。殺すぞ?」
「はっっ!はいいいいっ!」
「ど、どうと言われましても……「膠着状態」ってかんじですかね……」
雷庵「……」
ギロッと黒眼で男を睨む。
「「ひぃぃぃ!すいません!集団審理で調子乗ってました!!」」
雷庵「「膠着状態」正解だ。」
誰一人口には出さないが回り全員が心なかで突っこんだ。
「「「(正解なのかよ。)」」」
雷庵「…付け加えるなら、ただの膠着状態じゃねえ。……テメェら目を離すなよ。ギャアギャア喚いていると見逃しちまうぞ?黙ってろ。」
騒ぐと殺すといわれているのと同義の笑みを向けると肩を抱いていた男二人を床へと突き落とし自分がその席へとドカッと腰を下ろした。
一番野次がうるさかった観客エリアが急に静まり返り、周防製鉄の社長、周防みほのが思った。
みほの「(あっちの席、急に静かになったな?)」
静まり返った客席に視線を一瞬向けたがすぐに闘技場の方へと向きを変える。相変わらず二人は微動だにして居ない……。
摩耶「……」
悠「……」
摩耶「ハッハッ…」
悠「フッフッ…」
摩耶「ハァハァハァハァ」
悠「フゥフゥフゥフゥ」
組み合っている二人にしか聞こえない互いの息遣い、心音、熱気……その全てがピタッと重なる。
周防「……?」
あれ?さっきから全然動いていないのに……何か変わった?
雷庵「始まるぜ」
一瞬の硬直から摩耶は悠の首に回した腕に力を込めて一回転した。さながら鰐のデスロール。一気に絞り上げ悠の意識を遮断にかかった摩耶だったが悠もその回転合わせて大きく身体を振るわせた。身体が仰向けになり摩耶が背面に動く形になった瞬間、悠は跳ねあがって摩耶を押し潰しにかかるが、そう来ると分かっていたのか摩耶は悠の首から腕を解いて脱出する。
残ったのは自分から地面に背中をぶつけた男、しかし、硬い床に身体をぶつけているにもかかわらず、その反動を利用して一気に身体を起こし上げた。
だが、目の前には既に立ちあがっている摩耶の姿があり、ほぼほぼゼロ距離という超密着状態で悠の拳に手を重ねてピタッと動きを止めた。
そして、同時に悠も動きを止めてしまう。力で制されているわけでもなく、技をかけられているわけでもない。
それにもかかわらず二人の男はなぜか動かなくなったのだ。
「「「……」」」
静止状態が30秒も経たないうちに観客たちのヤジが飛び交い始める。
「……なんだ?動かねぇじゃん。」
「休むな動けーー!!」
「殺し合えーー!!」
「達人気取りかボケ!!」
「休憩なら家でしろ!!」
「くたばれ摩耶ーー!!」
「何が天才だクソガキー!!」
「動け動け動け動け!!」
「テメーもさっさと動けや悠!!」
「動けねぇなら仕合に出るんじゃねえよ!!」
「闘技仕合舐めんな!!」
鈴猫「なにこれ、酷い…」
大久保「はー…ちょっと膠着しただけで荒れるのー最終日でテンションおかしなっとるな。」
「……二、三人殴り殺して黙らせるか?」
暮石「無視無視「消費者」はこんなもんだって。」
西品治「……ッッ」
何を考えている!?ダースチョークを簡単に外された。……いや、「敢えて外した?」何かの布石か……?じゃあ、この膠着はなんだ?
野次が飛ばされようと未だ二人の闘技者は動かない。
一般の観客たちとは違い、VIPルームで観戦している闘技者たちは冷静に仕合の運びを分析していた。
窈「上手く誘導されたね。攻撃は全て捌かれているし、仕合をコントロールしているのは摩耶君だ。」
関林「俺は逆だと思うぜ。どの局面でも積極的に攻めているのは悠の方だ。摩耶もカウンター的に返してはいるが、攻めには消極的ともいえる。怪我もあるんだ。いつまでも凌げるはずがねえ、勝つためには自分から攻めねぇとダメだ。」
末吉「……」
いや。小鳥遊(窈)さんが正しい。場を支配しているのは、摩耶君だ。
「Boooo!!」
「お前ら死ね!!使えねぇんだよボケカス!」
野次を飛ばしている観客の背後から一人の男が身を乗り出すと一言共に拳をひと振りした。
「退け。」
軽く振った拳が観客の横っ面を打ち、余ほどの威力なのか止まること無く隣で一緒に騒いでいる男にぶつかった。
突然のことにそこら一帯のヤジが止んだ。
現れた男を見て観客たちは息を飲んだ。
「ッッ……ら……」
息をするように人を殺す【魔人】魏雷庵がそこに立っているのだ。
雷庵「クカカッ!そうそう静かにしてりゃいいんだよ。」
顔を腫れさせ鼻や口から血を流すヤジを飛ばしていた男二人を無理やり座っていた席へ戻して両方の肩に手を回した。
「「ひっ」」
雷庵「よし。お前らに質問だ。どう思う?」
「へ?ど、どうと言いますと……」
「仕合のことでしょうか?」
雷庵「質問で返すな。殺すぞ?」
「はっっ!はいいいいっ!」
「ど、どうと言われましても……「膠着状態」ってかんじですかね……」
雷庵「……」
ギロッと黒眼で男を睨む。
「「ひぃぃぃ!すいません!集団審理で調子乗ってました!!」」
雷庵「「膠着状態」正解だ。」
誰一人口には出さないが回り全員が心なかで突っこんだ。
「「「(正解なのかよ。)」」」
雷庵「…付け加えるなら、ただの膠着状態じゃねえ。……テメェら目を離すなよ。ギャアギャア喚いていると見逃しちまうぞ?黙ってろ。」
騒ぐと殺すといわれているのと同義の笑みを向けると肩を抱いていた男二人を床へと突き落とし自分がその席へとドカッと腰を下ろした。
一番野次がうるさかった観客エリアが急に静まり返り、周防製鉄の社長、周防みほのが思った。
みほの「(あっちの席、急に静かになったな?)」
静まり返った客席に視線を一瞬向けたがすぐに闘技場の方へと向きを変える。相変わらず二人は微動だにして居ない……。
摩耶「……」
悠「……」
摩耶「ハッハッ…」
悠「フッフッ…」
摩耶「ハァハァハァハァ」
悠「フゥフゥフゥフゥ」
組み合っている二人にしか聞こえない互いの息遣い、心音、熱気……その全てがピタッと重なる。
周防「……?」
あれ?さっきから全然動いていないのに……何か変わった?
雷庵「始まるぜ」