ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

開始位置についたふたりの間にレフリーの山本小石がたった。

小鳥遊悠はトントンッとステップを刻む、対して摩耶はわずかに腰を落とし両手を開いた受けを想定した構えだ。

「摩耶はスタイルを変えたか。二回戦みたいな奇襲はしないのかね?」

「……なんでもいいけどよ、大して期待できねぇな。怪我人同士の潰し合いなんて興味ないっつーの。しょっぱい展開になるんだろ、どうせ?」

「引っ込めー!
「早くしろーー!!」

「汚ぇ野次飛ばすなカス!!」
「小石ーー!!」

レフリーが腕を大きく振り上げ、叫びながら落とした。

小石「始めアァァァァァァッッ!!!!」

開始の合図と共にダンッ!と轟音を立て悠は超加速で摩耶に突撃していく。

【小鳥遊流:夏金ノ型・瞬鉄(砕)】

超スピードと硬化させた拳の一撃が襲いかかるが摩耶は自身の腕を悠の内肘に挟みこみ攻撃を潰し、抱きこむように掴んでそのまま悠を投げ倒した。

巨体が一回転して背中から地面落下するも上手く受け身を取り即座に立ちあがろうとするが、させまいと摩耶は悠の腕を抑えてストッピングで頭を踏み潰そうとした。ゴッ!と鈍い音が響くが悠は床をのたうってそれを避けた。陸に打ち上げられた魚のように大きく身体を跳ね回らせて摩耶の重心がずれた瞬間、逆に地面へと引きずり込まれた。

悠は即座に身体を起こして床に倒れている摩耶の顔面に拳を落とす。

ドンッという音とともにバギギッと鈍い音がして地面が砕けると同時に摩耶の両足が首へと絡みつけてきた。ギリギリと肉が絞まり骨の軋む音、腕拉ぎレッグロックとでも呼べばいいのだろうか。小さな身体が大きな体を絡め封じている……。

「おいおいおいどこが怪我人だよ!!??」

「キレッキレだぜ摩耶!!!」

闘技者用のVIPルームから一連の動きを見た【大物喰い】金田末吉は固唾を飲んだ……。

末吉「あの動き……!」

【先読み】だ!!守護者との闘いで見せた【先読み】の片鱗。完成させたのか!?

常人ならばこのまま何もさせず絞め落としていたであろうが、ここに立つのは常識の外の者。絞め続けている摩耶もろとも持ち上げていき、完全に立ちあがると膝をかち上げて摩耶の頭を潰しにかかった。

っが、膝が振り上がるか上がらないかの刹那のタイミングで摩耶はパッと絞めを解き悠の身体から離れ飛んだ。そして、そのまま地面にペタンっとへばりつくように着地してカエルのような動きで前へと跳ね飛びながら片足立ちになっている悠の足に腕を絡めると引っ張り倒しながら捻り込む。

前倒れになるのを膝と手で留め、身体を回転させた。捻りを決めさせない動き……っと、思いきや寸前で摩耶は足から手を解いていた。

捕えられている軸がなくなり悠の身体は中途半端な形で停止してしまった。瞬間、下がった頭、つまりは悠の長い髪の毛を鷲掴みにして再び地面へと叩き落としたのだ。

悠「ぐっ……!」

いくら摩耶が小さいとはいえ、真上から髪の毛を引っ掴まれて下に落とされれば容易に伏せ落とすことは可能。さらに覆いかぶりながら悠の首に腕をまわした。

摩耶「……無駄だよ。今の僕は、誰にも負けない。」

悠「上等じゃねぇか。」
82/100ページ
スキ