ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

小鳥遊悠は静かに目の前に立っている摩耶を見つめた、それに応えるように摩耶もしっかりと悠の目を見る。

家紋入りのファイティングパンツだけで露出している肌には無数の打撲痣の悠。

悠「……ボロボロだな摩耶。」

真っ白な拳法着から伸びる手足はこすれ擦り切れ生傷だらけ、そして息も既にやや粗い摩耶。

摩耶「……お互いにね。それでも、ようやく悠君と闘える。」

悠「……あぁ。」

摩耶「お互いにベストとは程遠いよね……だけど、断言するよ。今の僕は、僕史上最強だ。よろしくね。」

差し出されたのは右手。

悠「……勝たせてもらうぞ。摩耶。」

驚いた顔をした悠。すると一瞬だけとても優しい笑みを浮かべ、差し出された小さな手を握り返した。

鞘香『!!』
ジェリー『??』

普通に手と手を握り合っていた両雄、だが……下がっていく……。

鞘香『低いッッ!!両者、体勢が低い!!!断じて、へりくだっているわけではないッッ!!厳戒態勢だッッ!!握手という友好的行為を示しながら、両雄、既に戦闘態勢だッッ!!』

選手登場口で西品治チーム一行が横並びになり闘技場の様子を見る。

西品治「…何も起こらなかったか。」

鈴猫「なんの話です?」

西品治「クーデターの後、皇桜学園の奏流院理事長が教えてくれたんだ。」

アダム「あのHOTな姉ちゃんか。」

彼女が雇ってる闘技者、桐生刹那に暴走の兆候が見られる。

桐生刹那は松永工業の闘技者、小鳥遊悠に異常な執着を示していた。

西品治「小鳥遊悠と闘うためなら桐生は何をしてもおかしくない、と。」

三回戦で松永工業と当たるウチに、桐生がなんらかのアクションを起こすかと思っていたが……制御不能な人間を闘技者にするともりはない。

襲撃を想定して、用心棒兼交代候補を二人呼んでおいたが、杞憂に終わったな……。

…………一番の想定外は、お前が代表を続行したことだよ、摩耶…。

そうしていると小鳥遊悠と摩耶の手が解かれた。

鞘香『長い握手が終わり、開始位置に戻ります。両陣営、公表はしていませんが、摩耶、小鳥遊両選手が深刻なダメージを負っていることは誰の目にも明らかです。闘技者の変更なしという選択、吉凶は如何に!?』

VIPルームから下の賑わいを眺めている闘技会会長の片原滅堂がいった。

滅堂「そういえば……東洋電力の騒動では世話になったのう。お主が、蕪木・ハサドを買収してくれたおかげで、速水を制圧することができたわい。」

背後に立つのは小鳥遊コンツェル社長、小鳥遊兜馬。手に持ったグラスの赤ワインをひと揺らしてからひといきに飲み干すとテーブルに戻していった。

兜馬「……白々しい。アンタが守護者の中に患者を潜りこませていたことは知っている。スパイを通じて情報を流し、速水にクーデターを起こさせた。速水は最初からアンタの掌の上だったわけだ。」

滅堂「んん~~??そうじゃったかのう?最近は物忘れが激しくての~~?」

兜馬「……アンタがその気なら一人で速水を潰せたはず。何故そうしなかった?」

滅堂「……わかっとらんのう。試験じゃ試験。」

兜馬「……!なんだと……?」

滅堂「新しい遊び相手がおらんとつまらんじゃろう?合格じゃよ。兜馬君。お主なら或いは、速水より楽しませてくれるかもしれん。」

振り返り小鳥遊兜馬に見せたその表情は恐ろしいく老獪な笑み、そこから発せられる気迫はもはや年寄りなどというものではない、自然災害を押し込めて人の型に押し込めているのかと錯覚させる。
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