ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:VIPルームー

車いすに乗った茂吉・ロビンソンが運んでくれたはじめに向かって静かに言った。

茂吉「英先生……ありがとうございます。」

英「フフフ……礼はいらないよ。安心したまえ。時間はかかるが、治らない怪我ではないからね。」

茂吉「……はい」

痺れが残る手が車いすの手置き部分で震えている。

英「しかし、わからないね。私が、本職の戦士ではないからだろうが……自分を負かした相手の仕合を見届けたい、という心理は、理解しかねるよ。」

茂吉「……皆が思っているはずです。この場に来ていない者たちも含めて。それぞれの思惑は違えど、皆、待ちわびている。「王(最強)」が決まるその時を。」



松永工業控室、扉の前には護衛者二番隊隊長の吉岡が控えている。

室内では……床に横たわった悠の上に【天魔】魏迦楼羅が馬乗りになって見降ろしている。

迦楼羅「楽になったか?悠。」

背後から怜一が迦楼羅の両脇を抱えて退けた。

怜一「コラコラまだ治療中だ。」

迦楼羅「悠!!」

抱えられてバタバタと足を振るカルラを無視してホリスがいった。

ホリス「すまん。続けてくれ。」

「あいよ」

「やっちゃな娘だねぇ。」

ひとりは白衣を着た魏の一族、もう一人は十神将がひとり駒狸水仙だ。

魏の男は胸から上、水仙は胸から下にいくつも鍼を突き立てていく。

さすがに鍼が刺さった悠に飛び乗ろうとはせず顔の側に腰を降ろすと迦楼羅が言った。

迦楼羅「悠?楽になったか?」

悠「……ああ。嘘みたいに身体が軽いぜ。すげえモンだな。魏の一族も水仙ばあちゃんも。」

水仙「ババアいうんじゃないよ!!」

恵利央「……フン!当然じゃ。」

魏一族の技は活殺自在。秘伝の療術を昨日からぶっ続けて施しとるんじゃ良くならんはずがないわ。

カチャカチャと薬品を片付けながら古川柳が言った。

柳「もっともいつ死んでもおかしくないような状態じゃった。生き延びたのは最初に看た医者が英だったのが幸いしましたな。」

悠「柳と水仙バ……が来てくれたのはホント助かった。っか、それよりも魏のアンタがよく手を貸してくれるよな。」

そういうと恵利央は急に顔をしぼませて膝を抱えて座りこんだ。

恵利央「……見捨てるわけにいかんじゃろ……カルラの婿になるかもしれん男なわけじゃし……」

ホリス「立派だぞ爺様!」

堀尾「うむ大したものだ。」

怜一「ご褒美に飴ちゃんやるから元気出せって。」

水仙「めんどくさいジジイさね。」

柳「それはお前さんもだろ。」

迦楼羅「悠!爺様が私たちのことを認めてくれたぞ!これでやっと子が作れるな!」

悠「……ハハッ。お前はホント誰かと似てるなぁ……。まぁ、そういう話はゆっくりとちゃんと話していこうぜ。」

迦楼羅「……?」

そのとき、ガチャッとドアが開く音がした。皆が視線を向けると護衛者の吉岡が立っており、その背後に松永工業組が居た。
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