ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:空き室ー

起き上がり城の前に立って敵を見据える小鳥遊悠。

蘭城は視線を一瞬、城の方へと向ける。

アレはもう必要ない。今から小鳥遊悠を説得する時間はない、アレはここで始末する。当然、小鳥遊悠は抵抗するだろう。守護者の目を掻い潜って奴を会場に連れ出す。

……よし、殺ろう。

蘭城の行動は速かった。レイピアを構え踏みこみ城を貫こうと突きだした。

ガキャッ!

蘭城「……!」

悠「見え見えなんだよ。消えろ。テメーじゃ寝起きの運動にもならねぇよ。」

左の人差し指と中指でレイピアの刃を取り押さえている。

【小鳥遊流:金剛ノ型・鉄指】

蘭城「…………ッ!」

伸ばした腕を引こうとするが、たった指二本に捕えられたレイピアが引き戻せない。悠は手首を軽くひねるとカッターナイフの刃のようにパキンッと音を立ててレイピアの切っ先がへし折れた。

切っ先は折れてしまったが自由を取り戻した蘭城は上半身を下げが悠はそれに合わせて一歩だけ踏みだした。

ビタッと視線と視線がぶつかる。

蘭城は大きく後ろに飛び下がった。

城「いッッ!!」

今の動きは!?一気に「拳の間合い」に入って、「剣の間合い」を潰した!!相手の攻撃を未然に防いだの!!!

いつみの悠さんとは明らかに攻め方が違う……それ以上に満身創痍でそんな芸当……!!

その時、気がついた。背から見る小鳥遊悠の立ち姿。

そ……そういえば……悠さんの立ち姿…さっきまでの不安定さがすっかり消えている…!?どっしりとした安定感、まるで、骨が身体を支えてるみたいな……?

悠「もう一度だけ言うぞ、さっさと消えろ。」

敵は折れたレイピアを投げ捨てた。

蘭城「……小鳥遊の否……「弥一の血」は本物のようだな。」

悠「……何言ってんだ?いや……お前…「アイツ」の関係者か?なんで今頃「アイツ」が?」

城「(悠さん、相手を知ってるの?)」

その時、ドンッと鈍い音が蘭城の方から発せられた。メキメキと異音を立てて筋肉が盛り上がっていきドッドッドッドッと重低音の心臓のビートが鳴り響く。

城「あ……!あれは……!?これは悠さんの「鬼状態」!!!???」

元々大柄な蘭城の肉体は膨れ上がり全身に血管を浮き上がらせ瞳の白い部分が赤染まる。

蘭城「……力ずくで連れていく、「~~」の命は絶対だ。」

城「な……何がどうなってるの!?」

悠「……アレは鬼状態じゃない。今までずっと忘れてたぜ。それの本当の名前を。【憑神(つきがみ)】。フカしじゃないみたいだな。テメーが「それ」を使えるってことわ。下がってる城。コイツは退く気はなさそうだ。」

中国拳法のような指先を立てた構えをとる蘭城、それに対して悠も構えをとるが今までよりも自然体で柔らかな構えであるにもかかわらずどこか重みがある。

城「ッ……」

さ……!最悪の状況だ…!春男さんは戦闘不能。助力は期待できない。悠さんだって立ってるのが奇跡なくらいの重傷。さっきのような動きをいつまで続けられるか……。

敵は無傷。さらには憑神(?)まで使える……!どうするんです悠さん!!?
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