ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:飽き室ー

殺風景でロッカーや簡素な椅子しか置かれていない一室の床に意識のない小鳥遊悠と茂吉ロビンソンが寝かされた部屋、そしてもうひとり城厘が息を殺して身を潜めている。

城「ハァハァ…。」

ど……どうしてこうなった!?

数分前のこと、死角から放たれた手投げナイフが因幡にヒットした。間一髪で手で受けることで致命傷にはならなかったが掌を容易に貫通してしまっている。

因幡「痛ェッッッ!!」

関林「クソっ!!」

慶三郎「ちょっとバーイナ!しっかりしなさい!」

因幡「やられたでよー!」

英「まずはこの包囲を突破しよう。皆。呼吸を止めるんだ。」

そういうと英はじめは白衣の左右のポケットからペットボトルサイズのカプセル型の何かを取りだして床へと叩きつけた。ボンッと音を立てて白いガスが発生し部屋に充満し始める。

「ウォッ!?」

関林「今だ!嬢ちゃん達を連れて逃げろ!!」

春男「押忍ッッ!」

関林の命に春男は茂吉を肩に担ぎ悠と城を両腕に抱えて外へと飛び出し、近くの空き室へと運びこんだ。そしてすぐに出ていこうとする。

『どこに行くんです春男さん?』

『城ちゃん達はここに隠れていてください!!俺は師匠たちに加勢してきます。心配しないでください。』

そういって出ていってから数分ではあるが音沙汰がない。

城「なんでこんなことに……」

松永さん…串田さん……みんな無事なの……?

するとギィッとドアの開く音がした。視線を向けると巨大な人影、それは出ていった春男だった。だが……全身に幾重にも鋭い刃物で刻まれたような傷ができていて血まみれな姿。

声をかけようとした瞬間、大太鼓のような春男の腹の皮膚が内側から不気味に伸び立った……かと思うとズビュッと音を立てて鮮血と共に鋭い金属製の細い刃が飛び出してきた。

春男「ガハァッ!」

悲鳴を上げて巨体が前へと倒れ落ち、その背後にはレイピアのような武器を持った眼光鋭い白いスーツの男が立っている。

「見つけた。」

【守護者ランキング4位】蘭城



闘技ドーム周辺にて【外し】を使用した雷庵は全く引くこと無くランカー2人相手に猛進する。やや自分に近い位置に居た薙刀を持った茂呂目掛け殴りかかるが両手でしっかりと棒の部分を掴んで攻撃をガードした。その隙に分銅と鎌を振り回していた師岡は後ろに飛んで距離を開けて加速の乗った分銅を雷庵目掛け投げ放つ。

雷庵は頭を振って投擲物を避けた。その分銅は背後に居るガーディアンの頭を吹き飛ばした。着弾すれば人間の頭部を容易に破壊する威力……。

視線が一瞬目の前の敵から外れたのを薙刀使いの茂呂は見逃さなかった。石突で雷庵の胸を突き押し退かし返し刃で肩口から斜め一閃に切り裂いた。

雷庵でなければ死んでいただろう。だが、万全の雷庵ならば今の一撃にも喰らっていなかっただろう。

変造「あの馬鹿フラフラじゃねえか!!」

風水「大丈夫、兄貴は負けないよ。」

変造「でもよお…」

風水「…それより気になることが。」

【外し】の力が目を中心に発現している風水の瞳が敵のある動きを捉えていた。戦闘中にも関わらずランカーの二人は視線が下がることに。

また見た。あの二人……何かをしきりに気にしている。視線の向きからして、おそらく腕時計=時間を気にしている……?……何かおかしい。
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