ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:医務室ー

各所での戦闘が本格化する中、早い段階で医務室に雪崩れ込んだ制圧組だったが未だに現状が前進していなかった。

一見追い込まれたように思えた負傷した闘技者たちだったが、因幡が髪を振り伸ばしガーディアンのひとりの足を捕えた。

「チィッ!」

そのまま引きずり込まれていき室淵剛三の膝蹴りが顔面に突き刺さる。

室淵「春男君「絶体絶命」といったかね?確かに少々きつい状況だが、「環境」を利用すれば十分勝機はある。」

春男「……か?」

城「環境ぉ?」

悠「……」

中心で未だ意識の戻らない小鳥遊悠の手が拳へと変わっていく……。

そんな中、ガーディアンのひとりが懐から両刃のナイフを取り出し、人垣の死角から投擲した。

狙いは……低い位置から奇襲を仕掛けてくる因幡良。

城「ああッッ!!因幡さん!!」



地下の廊下、右京山寅の左拳が裂けた皮膚一枚ではあるが刃が切り裂いていったのだ。

寅「ヌッ!」

青龍刀を縦横無尽に振り回し廊下の中心を陣取る龍旼。

龍旼「いいのか?左手だけで。それとも、右手は使えねぇか?」

紙一重で致命的な一撃を避けてはいるが寅からも攻めきれずにいた。寅の背後ではアダムがハァハァと荒い息をこぼして敵を睨みつけている。

アダム「ッ……!!」

SHITッッ!!!雑魚は何とか潰せたが、コイツは……このロン毛ホモ野郎マジでヤベェぞ。
……SHITッッ!!止まらねぇ!!

左手で右の脇腹を抑えているが尋常でない血液が流れだしている。

そろそろやべぇなこりゃ……カネダとマヤが戻るまでもつか?

寅とアダムがガーディアン達を相手取っている間に車いすに乗った摩耶を末吉が連れて助けを呼びに行く算段だったのだが……。

末吉「(戻る!?助けを呼ばずにですか!?)」

摩耶「無理だよ金田さん。ドームの中で護衛者と白スーツが闘ってる。観客席へ繋がる通路は特に厳重に固められている。それとドームの出入り口も…」

助けを呼びに離れた先の廊下の角で摩耶の言うように闘いが勃発していて通り抜けることも応援を頼むこともできない状況だった。

末吉「……確かに。我々は、閉じ込められてしまったわけですね。……我々だけじゃないドーム全体が、奴らに隔離されたと考えた方が自然です。って、摩耶君!?」

ゆっくりと車いすから立ち上がる摩耶に驚きの声を上げる末吉。

摩耶「助けが呼べないなら、僕たちがやるしかないよ。」

末吉「無茶だ!君は一番重傷なんですよ!!行っても足手まといになるだけです!!」

摩耶「……そうだね。でも、そうじゃないかもしれない。……感じるんだ。もう少しで「完成」できるって。」

車いすを捨て、摩耶は自分の足で歩きもと来た廊下へと進んでいく。

寅「!!」
アダム「!!」

聞こえてきた足音に振り返った二人だったが、そこに居たのは助けを呼びに行ったはずの摩耶と末吉。それどころか摩耶は自分の足で立っている。

龍旼「なんで?殺されに戻ってきたか?」

末吉「柳葉刀(青龍刀の正式名称)は、恐ろしい武器です。当たれば首だって飛ばされますよ。」

摩耶「……当たらなきゃ問題ないさ。トーナメントは、終わらせないよ。」

弱弱しい足取りであるにも関わらず摩耶は、アダムを、寅を抜いてロンミンの前へと踏みだしていった。
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