ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:第二VIPルームー

速水と実光に決定的な亀裂が入るなか、意外な人物が叫んだ。それは義武啓朗。

義武「ふざけるんじゃ…ないわよっっ!!」

速水「…何か言ったか?小蠅。」

小指を立てた独特の拳の握り方をして精一杯の虚勢を張ってズイッと前へと一歩踏み出した。

義武「私は私の力で天下を獲る!!!アンタの手助けなんていらないのよ!!」

紫苑「ほぉー……オカマが男を見せたじゃねぇか。」

義武「おだまり紫苑ッ!!ぶっちゃけいっぱいいっぱいよ!!」

禍谷「だが、まぁそういうことだな。」

太宰「うむ。」

飯田「義武社長の意見は、この場にいるものの総意でしょう。一部を除いた、ね。」

ロナルド原口「!!」
秋男「!!」

大屋「この場を借りてこの間のお返事を。アンタの片棒を担ぐなんてまっぴらだ。」

熱海「右に同じく」

太田「(お、俺はどうすれば…)」

ほぼ全員がNOを突きつける、速水はその中の一人の男に視線を向けた。

速水「……ふん。お前はどうする明?お前の亡父は私の中心だった男。唯一、この場に勝社である貴様を呼んだのは、私なりの最大限の配慮だ。」

西品治警備保障社長の西品治明は一切の感情を捨てた侮蔑の目で速水を睨んだ。

西品治「……「忠臣」ね。その忠臣の始末を瓜田社長の御父上に命じたのは誰なんでしょうね?」

瓜田「貴方の傀儡だった僕の父は、言われるがまま西品治社長の御父上を……僕たちは違う、アンタの傀儡にはならない。」

速水「……戦局も読めぬ愚物共め。もうよい消えよ。」

ガーディアン達が動きだそうとしたとき、片原滅度がヒョイっと手を上げた。

滅堂「速水の……聞いてもいいかの?」

速水「片原。この期に及んで悪あがきか?」

滅堂「いやいや。主にどーしても聞いておきたいんじゃ。…トーナメントの結果など、最初からどうでもよかったんじゃろ?」

速水「愚問。だが、答えてやろう。トーナメントの優勝など初めから眼中にないわ。貴様の定めた理を完膚なきまでに破壊しつくすことこそ我が真の目的よ。私の真の手駒は、守護者と二階堂率いる天狼衆のみ。まあ、天狼衆は「テロの実行犯」として切り捨てるつもりだったがな。」

滅堂「ふむ。ドームに仕掛けた爆弾の件じゃな?そのことをもちっと聞かせぃ。仮にワシが主の要求を飲んだとして、会場の人質たちが、主の会長就任を認めなかった場合は?」

速水「無論、会場ごと消えてもらう。ドームの外は守護者で固めた、逃げることはできぬ。」

滅堂「……会場には各国の要人、主の配下の闘技会会員達もおる。それでもやるか?」

速水「当然。微々たる犠牲を恐れて、王座が獲れるか。」

滅堂「はいOKィ~~これで証拠はバッチリじゃぞい♪」

片原会長は手に持った機会を掲げて二カッと笑った。

速水「……」

滅堂「いや~~「偶然」レコーダーを持っておってらっきぃだったぞい♪これを聞かせた主の部下たちはどう思うかのう?」

速水「……馬鹿か貴様は。」

滅堂「もっとマズいのは、各国首脳にこの音声を聞かれることじゃの。テロの親玉が主と知れたら……闘技会会長など夢のまた夢。それどころか、二度と表舞台には復帰できんじゃろな。」

速水「……貴様は馬鹿かと言っている。」

……なんだ?

滅堂がレコーダーを操作するとさっきの会話が再生される。

『無論、会場ごと消えてもらう。』

滅堂「ほー!よく録れとる。言い逃れは難しいのう。」

速水「少し黙れ。それをどうやって外に持ち出すつもりだ?貴様らは、完全に包囲されているぞ?」

もはや片原に打つ手はないはず……だが、なんだ?奴の余裕は?

「か、会長!」

その時、トランシーバーをもったガーディアンのひとりが速水に耳打ちをした。
59/100ページ
スキ