ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

医務室のベッドに横たわる小鳥遊悠は未だに目を覚まさない。口につけられた人工呼吸器のシューという音と心電図のピッピッという音だけが一定のリズムで鳴り続け側には城厘がうなだれるような形で椅子に座っている。その時、悠の指がピクッと動いたことにも気がつかなかった…。

同時刻、闘技ドーム内の廊下を車いすに乗った摩耶をアダム・ダットリーが押しながら何かを探している様子だった。

摩耶「こっちも探してみよう」

アダム「Ok」

そのとき廊下の角から声がかかった。

「おや?お二人さん。」

声のした方へ顔を向けると金田末吉と右京山寅の二人が居た。

摩耶「えーと……金田さん、れに寅君。」

末吉「これは意外な組み合わせですね。」

アダム「そりゃこっちのセリフだ。」

寅「お前ら、誰か探してんのか?」

アダム「まぁな。ただいまFUCKIN捜索中さ。お前ら、俺達の雇い主の西品治のダンナとキャットGirlを見かけなかったか?」

末吉「!!」

寅「!!」

摩耶「え?アダム、いつからウチの所属になったの?」

寅「末吉…」

末吉「ええ…やはり変ですよ。」

摩耶「…どういうこと?」

寅「俺の雇い主の飯田正も姿が見えねぇ。」

末吉「ウチの大屋会長もなんです。二人ともボディガードにも行き先を告げずにいなくなってしまって…」

摩耶「えっ!?」

アダム「What?お前らのBOSSも行方不明だと?」

そのとき会話を割るようにドンッと硬いものが何かにぶつかったような重低音が廊下に響いた。

摩耶「な、なに?」

寅「向こうの方向から聞こえたぞ。」

音がした廊下の先では武装をした白いスーツの集団が集まっていた。床や壁には血まみれで倒れている黒服の男たち……。

白スーツにロンゲの男が無線機らしきものを撮りだして何かを伝えている。

「こちらD区域制圧完了。」

アダム「こ、コイツら!!?」

寅「揃いの白いスーツ…東洋電力の「守護者(ガーディアン)」とか言う奴らか!」

寅たちを鉢合わせたガーディアンのリーダーらしき男、龍旼は無線機に再び声をかけた。

龍旼「あー…こちらD区域担当。報告を訂正する。追加だ。死にぞこない四匹を、処分する。……運の悪い連中だ。よりによってD班(俺)に出くわすとはなね。」

そう言い終わるや否や白スーツの武装集団が襲いかかってくる。槍、ナイフ、棍棒のような鈍器を手にしている。

明らかに向けられた敵意に対して寅とアダムは前に飛び出し、末吉は後ろに下がると慌てて摩耶の車いすを掴んで下がりだす。

槍を持つ男の顔面に寅のジャブが炸裂し横っ面が大きく歪みぶっ倒れ、寅はその脇を抜けていく。残りの武装白スーツはアダムが相手取る。寅の狙いは龍旼。一気に間合いを潰しにかかろうとしたが寅は踏みと止まって上半身を大きく後ろに引いた。瞬間、胴体の辺りに一閃の風が吹くとワイシャツの前がスパッと裂けた。

寅「ッ!!」

更に二度ビュッビュッと鋭い風斬り音に寅はバックステップで大きく飛び避けた。

龍旼「喧嘩ごっこには付き合わねえ。」

そういって手に握る青龍刀の切っ先を向けて笑う。

徒手と武器有りの間には、大きな壁が存在する。ましてや現在右京山寅を含む闘技者たちは手負い、その劣勢は明々白々。勝負が長引けば、その差はさらに広がる。

ステップを踏み、敵の間合いを把握した寅は再び踏みこもうとした。がっ……咄嗟に上半身を大きく下げた。ブォンッという音が頭上を過ぎ、ギャギャッと壁を傷つけた。

寅「……(何!?)」

龍旼「悪ぃな、俺の間合いは「ボクサー立ち入り禁止」なんだよ。」

柄の下についている紐、ただの装飾ではなくその紐を掴んで振り回している。否、操っているのだ。

寅「チッ……(熟達してやがる!)」

他の奴らもかなりの手練れみてぇだが、このクソロンゲが頭一つ抜けてやがる。間違いねぇ、こいつが首魁だ。
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