ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー餓鬼ヶ原樹海:深部ー

目的の場所に着くや否や悠は手足に重り、いわゆるパワーバンクルをつけるように指示された。いざつけてみるもメチャクチャ重い……というわけでもない。

夜見「修行は四肢に重りをつけて行う。修行を終えるまで外すことは許さん。それぞれ重さは10キロ……いや、11だったか……?……まぁいいや、合わせて40キロぐらいだ。」

悠「おいおい、適当だな。なんでもいいけどよ、この程度の重りじゃ大したトレーニングになんねぇぞ?」

空に向かって拳や蹴りを振るうが別段問題なくて動かすことができる。

城「えぇ……10キロって大概ですよ…」

全ての荷物を預け持たされている城のひとりごとを無視して悠はつづけた。

悠「それで、どんな修行するんだ?筋トレか?それとも型か?」

夜見「構えろ。」

悠「あ?」

夜見「組み手だ。そのままの状態で俺と立ち合い、一撃与えるまで修行は終わらない。無論、手加減は話だ。」

悠「……はぁ?おいおい冗談きついぞ。素の状態でもアンタから一本、取ったことがないってのによぉ。っか、組み手って今までと何も……!!」

瞬間、間合いを詰めた読みがボディブローを叩きこんできた。加減をしていない腹筋を貫く芯のある打撃に悠の身体は空に打ち上げられ血を吐きだしながら地面に落ちた。

夜見「これでも冗談か?」

悠「けぼっ……!」

コイツ、本気だッッ!!

夜見「死ぬ気で頑張れば乗り越えられるシロモノを、「試練」とは言わねぇ。不可能を克服して始めて習得できる物。それが奥義だ。」

悠「ハッハッ……ハッハッ……!!」

呼吸を整え拳を構えて立ち上がる。ふーーっと深く息を吐き前へと踏みだした。射程内に入り込むと拳を放つが夜見は容易にそれを避けカウンターに横面に拳を叩きこんでくる。殴られながらカウターにカウンターを仕掛けようとするが避けられ逆に顔面に拳をぶつけられた。

夜見「なんだそりゃ?扇風機か?」

悠「ッ……!」

分かりやすい煽りをしてくれる。こうなったらと上半身を大きく下げて下半身をつかみ取りにかかった。しかし、足元はぬかるんでおり下手に重心を変えてしまったせいでズルリッと滑り転んだ。

夜見「気をつけろ。整地された地面じゃねぇんだ。そんな基本もままならねぇのか?」

背後で聞こえる声に血管がブチ切れそうになる。身体を起こしながら悠は手の中にぬかるんだ泥をつかみ取り投げ散らしながら振り返った。しかし、そんな小細工が通じるはずもなく回し蹴りが悠の顔面を弾き飛ばした。

執拗たる顔面への攻撃と衝撃に意識が飛びそうになるが悠の長い髪を引っ掴んで無理やり意識を取り戻させる。

夜見「起きろ続きだ。」

悠「!!」

間髪入れず引っ張り上げられて顎をかち上げられた。反撃もままならない組み手とは到底言えない一方的な暴行を受け続ける……。
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