ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー???:???ー

これは闘技会本戦開催まで残り1カ月と少しにとなった頃……。小鳥遊悠はテーブルを挟んで冬花夜見の話に耳を傾けている。

夜見「今させだが、四季流は四つの系統に分かれている。」

無ノ型は一旦置いておくとしてと付け加え、テーブルの上に置いてある紙に菱形をかいて各角に春、夏、秋、冬の字を書いてつづける。

悠「……」

夜見「四季系統の上に奥義がある……これは間違い。奥義は、四季の「中」にある。そんなわけで奥義を使いこなすには、四季の全てを極める必要がある。まぁ早い話、各季節の技を発展させたのが奥義ってことだ。」

菱形の真ん中に奥義とかいて筆を置いた。

悠「っか、こんな話をいきなり始めるってことは奥義を教えるってことか?」

夜見「本来ならもっともっと時間を掛けて行うものだが本戦まで一カ月と少しだ。いつまでもダラダラと遊んでいる場合じゃない。」

この四カ月、一度たりとも遊んでいる様なことは無いほど扱き続けられていたと喉元まで出かけた罵詈雑言を飲みこんで悠はいった。

悠「まぁ……言いたいことは多々あるがこの奥義について部外者が聞いてるのはいいのか?」

城「部外者って…」

なんだかんだで最初から最後までしつこくついてきて雑用係にされている城厘がお茶を二人の前に置き終わると当然のように同席している。

夜見「どうせ聞かれたところで四季の技のひとつも習得できてない小娘だ。問題ない。」

城「だって教えてくれないじゃないですか…」

ブツブツと小声で文句を言うも夜見は無視して話を続けた。

夜見「……はっきり言うが、奥義の習得は、死と隣り合わせだ。お前は、形なりにも俺の持つ技術、他の十神の技術をもっている。それを洗礼していけば、奥義に頼らずとも十分強くなれる。」

悠「……おれはあのポマード野郎をブッ倒したい。だから一つでも手札が増えるなら習得しておきたい。」

夜見「…………そうか……。ならば行くぞ。試練の地へ。」

今現在居る森の中から西へ100キロ強、餓鬼ヶ原樹海。

悠は必要と思われる荷物を3つ抱えて前を歩く夜見に平然とついていく。ただ、その後ろでは息を切らしながら手ぶらで必死に追いかける城の姿もあった。

悠「お前よぉ、荷物もってやってんだから遅れんなよ。」

城「す、すいま……せん……!」

夜見「ここを訪れるのは、いつぶりだったか忘れたが、昔同じように奥義を志した奴が、ここで死んだ。」

悠「……弟子とかか?」

夜見「ん。ま、その辺りは追い追いな。つあ着いたぞ。この辺りが樹海の中心だ。」

苔むしっており日中であるはずだが光も僅かにしか刺し込まず足元は水はけが悪いのかぐずぐずであり風の通りも良くないらしくムワっとした熱気と淀んだ空気が蔓延している。

悠「森に入ったときから気になってた。生き物の気配がねぇな。」

夜見「ここ餓鬼ヶ原樹海は一体が強力な磁場になっている。迷い込んだら最後、方向感覚を乱され二度と出ることはできない。広大な土地と豊富な土壌がありながら、どんな生き物も対応できない。あらゆる生き物を拒む死の森。」

悠「ふーん、アンタも死の森から生還したってわけだろ。修行にもってこいの環境だ。」
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