ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

仕合の決着がつき観客たちの歓声が冷めやらぬ中、加納アギトは険しい顔でエレベーターに乗り込んだ。1.2.3……っと上昇していき数字が点燈していき、最上階、数字ではなく「滅」というプレートが点灯して扉が開いた。

VIPフロア階層の廊下をズンッズンッと歩いていき一つの扉を開き中へと入った。

アギト「……」

なんという体たらく。だまし討ち、フェイクを駆使して薄氷の勝利。否、勝利と呼べるのか。

「負傷した男」を相手取ってあのような……!

私は【滅堂の牙】を名乗る資格があるか?

不運という他ない。

右ストレートを肘で受けたあの瞬間、右京山寅の右拳は砕けた。砕けた、はずだった。負傷など意に介さぬように、猛攻は止まらなかった。

【恐怖】を見た。

私は、奴を怖れたのか!?私はッッ……!!



ラルマー「葛藤?」

滅堂「左様。強者故の葛藤ですじゃ。今日までアギトは、圧倒的な実力のみで勝利を重ねてきた。しかし、右京山寅を制するために「駆け引き」を用いざるを得なかった。あの子はそれを「卑怯」と考えておるじゃろう。」

ラルマー「なるほど……圧倒的、強者故の傲慢よの。」

……ええ機会を貰ったの、アギト。じっくりと悩めばええわい。

滅堂「あっ、それはそうとラルマー殿♪」

ラルマー「よい、皆まで言うな。主の勝ちだ。金は先刻振り込んで置いた。」

滅堂「わおッッ!!仕事が早いですのッ♪早いといえば、二回戦終了を祝して早めの慰労会などどうかの?」

ラルマー「うむ!美しい女たちは揃っておろうな?」

「「「(なんだかんだで仲が良い……)」」」

護衛者たちは一連のやり取りを見て口には出さないがそう思った。

滅堂「さぁ宴じゃ♪宴じゃ♪」

ラルマー「……」

…大儀であった。
トラ・ウキョウヤマ、貴様は、余が最も信を置く兄弟(はらかた)同然の存在、「出来の悪い兄」には、「弟」が必要だ。……必ず戻ってこい。


ドームの廊下に設置されている自販機に小銭を入れ「ミネラルウォーター」のボタンを押し出てきたペットボトルを末吉が取りだすと、そばのベンチに横になっている寅が口を開いた。

寅「……金田……俺は死んでいたな。」

決着からレフリーが止めるまで、追撃する時間は十分だった。映像が残っている過去32仕合のうち、今回の仕合と同じくダメ押しが可能な展開だったのは8仕合。トーナメント一回戦を含めば9仕合です。

末吉「うち6仕合。加納はダメ押しの追撃を加えています。喰らった6人のうちも4名は死亡、残る2人も闘技者を引退しています。」

そういうとペキッとペットボトルのキャップを開けて寅へと差し出した。

ヨロヨロと身体を起こして左手でそれを受け取る。

寅「……3分の1か。偶然か、あるいはあの野郎に思うことがあったのか…………どちらでもいい。俺は、まだ上を目指せる。」

末吉「…ですね。(まだ強くなる気?)」

寅「……ゴクッゴクッ」

右腕の感覚が……ない。……叶わねぇかもしれねぇな…ボクサーとしての復帰は……。

悔いは、ない。俺は戦い抜いたぞ……。

同時刻、酒瓶を側において廊下で一人座りこんでいるサーパイン。

…スゴすぎだぜ…トラ……ホントにスゲェよ……随分、差をつけられちまったな……。

サーパイン「ふ~……シャアアアアアアァァァァッッッ!!……よしッ。……ありがとよ、寅。俺はもう迷わねぇッッ!!!「覚悟」は決まったぜ!!!」

【闘神】右京山寅 二回戦敗退。


東洋電力専用の一室、ドアを開け静かに黒髪長髪で白いスーツの男が中へと入っていく。

鬼頭「なんだ?どこに行ってた龍(ロン)?」

龍旼「なに…ちょっとな…」

部屋の主である東洋電力会長の速水勝正が葉巻の煙をフーッと吐いて口を開いた。

速水「……頃合いだ。二階堂蓮は?」

鬼頭「まだ連絡がねえっす。」

速水「まあいい。「捨て駒」の役目は終わった。プランBの仕込みは完了済み。「革命」を始めるぞ。」



第一仕合勝者、摩耶

第二仕合勝者、小鳥遊悠

第三仕合勝者、金剛

第四仕合勝者、結城・クリストファー・凍夜

第五仕合勝者、百目鬼雲山

第六仕合勝者、氷室薫

第七仕合勝者、初見泉

第八試合勝者、加納アギト

闘技絶命トーナメント、二回戦終了
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