ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

勝負の粋を超えて、殺生……力を髄を四肢に込めた打ち合い。打撲音と風を切る音が混ざりあい闘技場を支配する。

髪を振り乱し寅のラッシュに喰らいついていくその様子をモニター越しに観戦していた金剛がこぼれる汗も拭わず固唾を飲んだ。

金剛「ッ……!!」

やはりッッ!!打撃戦では、寅に分がある!!

ラッシュとラッシュの打ち合いだった、しかし寅の勢いがすぐに盛り返した。本気を超えた殺意を乗せた拳が蹴りがアギトの全身を打ちつける。当然、直撃が入らぬようにガードを固めて一心に全てを受け切っている。

二連続のストレートが腕を、ローキックが腿を、回し蹴りがボディを襲う。

金剛「(凄まじい!脱力でいなす隙もない!)」

医務室でも寅の猛攻を超えた凶襲撃に短観の声を漏らす。

英「ひゅー♪ガードで精一杯か。」

関林「いや。「ガード」させている。手足をぶっ潰す気だ。」

ボクシングとキックボクシングとムエタイ、最強の男の打撃を受け続けてんだぞ?いつぶっ壊れてもおかしくねぇよ。

そして寅の猛烈な一撃がアギトの右の二の腕に深く突き刺さった。構え上げていた腕がガクンッと落ちる。

寅にとって……絶好の好機!!



そして、加納にとっても。



肘での追撃を仕掛けようとした寅の今しがた崩れ落ちたはずの右腕が伸びて寅の顎を穿った。

寅「……ッ……!!」

アギトの二の腕にはこぶし大の陥没ができているがボコンっと膨れ戻る。観客席でそれを見ていた松永久秀は目を細めた。

久秀「……」

筋肉を引き締めダメージを軽減させた。……「あの技」を知っている。あの技は、悠の「不壊」と同じ。桐生刹那に続いて、【牙】までが悠と同じ技を……ただの偶然なのかしら……?

大久保「アカンッ!!モロに入った!!」

末吉「寅さんッ!!!」

完全な右ストレートをぶちこんだアギトは食いしばった歯の隙間から大きく空気を吹きだす。殴られた寅はグラッと身体が傾くが大地を蹴り踏みしめ左フックをアギトの顔面に叩きこみ返したのだ。

あらゆる闘技者は決着がついた、と思った最中の寅の反撃に驚愕する。

「「「「!?」」」」

鞘香『こっ、今度は寅が返したーーっ!!!』

アホなッッ!!加納の打撃をモロに喰らったんやぞ!?

大久保「なんで立っとんねん!?」

【牙】の「不壊(?)」を以てしても寅の打撃を無効化させることは叶わない。蓄積されたダメージは、加納の打撃力を大幅に低下させていた。

だが、寅も万全とはかけ離れた状態、不意打ちで貰った左顎への一撃は、平衡感覚に深刻なダメージをもたらしていた。

二人の男は全身で荒い息をこぼしながらふら付く足を必死に踏みしめて敵を睨みつける。間違いなくどちらも瀕死、本当ならば立っていることも限界のはずだが二人の闘技者は自分たちが退くことを許しはしない。

そして…………最後の攻防が始まった。
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