ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

「誇り」と「闘争」を兼ね備えた最強の打撃者(ストライカー)の打撃がアギトを打つ、打つ、打つ打つ、打ちつけて押し込んでいく。始まりも止めさせない、終わりも掴ませない。獣のが如くの猛撃を受るも【牙】は雄叫びを上げて力づくに殴り返した。

アギト「それがどうしたァァァ!!」

反射的に力で割り込んだカウンターをガードした寅だったか大きく後ろに弾き飛ばされる。

寅「ハァハァハァハァ…」

ノンストップの全力攻撃の連打に寅は明らかに大きく息を乱していた。しかし、それは牙もおなじピッチリと固めていたオールバックが乱れゼェゼェと洗い呼吸で疲労がダメージが目に見えている。

アギト「貴様がハァハァ……どれだけ強かろうが、「適応」して「超越」してやる!!!」

それが【滅堂の牙】だ。

スウゥッと呼吸を整えるとアギトから踏みだした。大地に稲妻が走るかの如く超速移動。寅はそれを【閃光】で迎撃するも隙間を掻い潜り避け切った。

フラッシュ(それ)はもう見切った。

間合いを詰め切りアギトは拳を振るう。死神の鎌が首を斫るかの一撃を寅は上半身を捩じり振りアッパーでカウンターを決めた。

が、手が挟みこまれガードされている。牙はグニイィっと笑うと半歩踏みだし寅の足を踏み抑えた。逃がさぬとばかりに拳を振り降ろす。咄嗟に両腕を立ててガードしたが鈍器で殴られている様な衝撃……。

ゴッ!ゴッ!ゴッ!と殴り続けてくるアギトの一撃の重さに寅の身体がガードもろとも斜めに身体が揺れるも次撃に合わせて行動に移した。アギトの攻撃をしっかりと左腕で受け止めながら右ストレートをアギトの顔面に打ち返した。

渾身のカウンターにアギトは大きく後ろに吹き飛んだと同時に寅の足を踏み抑えていた拘束が外れ、闘神は再び猛襲を開始する。

一見すれば力任せの暴撃、しかしその実、針に糸を通すような鋭く重いラッシュと敵の反撃に対応できる反射力、攻防一体を為すストライカー。

バーのモニターに齧りつく勢いで仕合の様子を見たいるサーパインは声を失っていた。

トラ、お前……ッッ…メチャクチャ強くなってルじゃねえかッッ!!!

観客席の最前列で仕合を観戦している【大物喰い】金田末吉。

末吉「(……やっぱりね。一回戦は本気じゃなかったと…)」

寅「フゥッ……!!」

許せよ。決して手を抜いてたわけじゃねぇ。俺はいつでも本気だった。「勝負の範疇」でな。

打ち合いに最中に生まれる隙、その刹那を逃すまいと闘神は孤月を描く鋭利なフックを放った。当然アギトはそれを避けるために上半身を避けるが一筋の裂……アギトの首を切り裂いたのだ。

ここからは先は、殺生の領域だ。

動脈を狙った強烈なフリッカーを受けたアギトは……ギッと首の筋肉で出血を押し止め寅に殴りかかる。

アギト「ハアァァ!!」

寅「(浅いか…ッ。)」

牙の攻撃をガードしつつ前蹴りで押し返し、互いの距離が僅かに開きかけたが双雄は即座にラッシュ比べを開始した。
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