ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

牙が体勢を立て直すと勢いよく踏みこもうとした。だが、寅は瞬時にワンステップで牙の側面へと入り込む。それを逃がすまいとアギトの右ストレートが放たれるも空を切りカウンターに寅の右ストレートがアギトの顔面を打ち据えた。

直撃……とも思えた一撃だったがギリギリでアギトは額で受けた。首への負荷に加え額が裂けたことによる出血。それでも止まること無くアギトは拳を振るう。

立見席で一見すると一進一退の攻防の仕合を見ている大久保が隣にいる氷川へいった。

大久保「どや氷川?わかったやろ?」

氷川「……確かに。」

【牙】は確かに蹴ろうとしていた。

右の回し蹴り。重心の高さから見てミドルかハイ。

だが、寅は即座にサイドに回り込み、蹴りを未然に阻止。

【牙】が獲るべき行動は?

1.距離を取る
2.バックブロー
3.肘打ち

距離を取れば右ストレート

バックブローには右フック

肘打ちには左ストレート

つまり、いずれも不正解。

【牙】に残された最良の選択肢は左のストレート。寅は、そこまで読んでいた。

大久保「…納得いかんか?」

氷川「当たり前だろッッ!!たった今目の当たりにしたばっかりだって言うのに……あんな真似を狙ってできるなんて……」

大久保「……(イラついとるやろ。こないに不自由な戦いは、初めてやろ?)」

一見して拮抗している様でその実一方的に撃たれ続けだしてアギトはガードを固め、打撃の雨を耐え続ける。だが、その顔は……未だ笑みが崩れていない。

反撃とばかりに大振りのフックを仕掛けた。寅はそれを容易に躱した。

振り戻りながら左のロー

アギトの次の動きが脳裏に過る。すると寅は大きく踏みこんで右腕でアギトの右肩を押さえると蹴りの始点を潰した。

アギト「ヌゥッ!」

寅は密着状態から左のショートアッパーでアギトの顎を強襲。ゴッ!という打撲音が鳴るがアギトは左手を挟みこんで直撃とはならなかった。

後ろに飛び下がり距離を開けながらガードを固めるが当然寅の追撃は止まらない。

しかし、喜びに満ちていた。

寅、右京山寅よ、俺は嬉しいぞ。初めてだ。不自由を強いられたのは。

足を止めて打ち合いになれば何度かに一度重い一撃がアギトに突き刺さる。

……やはり「受ける」のは難しい。

「うわああッッ!!滅多打ちだァーーーー!!!」
「何やってんだ【牙】ァーーーっ!!!」
「【亀】に改名しろオーーー!!!」

観客たちは好き放題に汚いヤジを飛ばす。その間も寅の【閃光】の打撃浴びせられ、鋭いフックが顎を狙い放たれた。

これも直撃……かと思われた瞬間、寅の右腕、ひじ関節の部分に腕を挟みこまれフックを止められ肩で押すようなタックルに似て非なる動きで寅を地面へと落とし倒した。

「「「「「!!?」」」」」

観戦している闘技者たちがいち早く反応する。

ラルマー「……(なんだ?「今の動きは?」)」

滅堂「……(「適応」した。よく闘ったが、ここまでじゃ。)」

アギト「なるほど。これが「終わりを抑える」感覚か。」

【牙】は肩をグリングリンと回す。両肩で∞を描くような動きだ。

寅「…面白れぇ。ボクシングよりは筋が良いみてぇだな。」

…今の動きは……?
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