ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

初期位置に立ち合う二人の闘技者の間にレフリーが立ち叫びをあげる。

チーター服部「準備はいいか!?それでは……構えてッッッ!!!」

寅は左拳を胸元に、右腕はダランっと垂らした。ヒットマンスタイルをとった。

鞘香『寅選手、お馴染みのヒットマンスタイルで構える。』

ここまでは予定調和。だが、その次の瞬間、右京山寅はおろかこの仕合に注目している全ての闘技者、レフリー、司会進行、観客……全ての人間の心と頭に「!?」が浮かんだ。

それは対戦相手である加納アギトが取った行動。左拳を胸元に、右腕はダランっと垂らす……寅と同じ構えをとったのだ。

鞘香『フッ…!フリッカーだアアアアアアッッ!!!寅選手と全く同じ!!ヒットマンスタイルだァァァァァァッッ!!!』

目を大きく開いて面食らっていた寅だったが軽く頭を振って今一度敵を鋭く睨みつけた。

寅「…………ボクシングがしたいのか?その冗談は、不快だ。」

鞘香『さあさあさあさあ。大変なことになってきた!!フリッカーVSフリッカー!!ヒットマンVSヒットマン!!!究極のスナイパー対決が始まるッッッ!!!』

アギト「……」

酔狂と思ったか?右京山寅。
トーナメント参加者の中にお前の名前を見つけた時、心躍った。

俺が認める、当代最高峰の拳闘士。

倒したいこの男を。拳闘(この男の流儀)で。

チーター服部「始ッッッるァァアアアアッッ!!!」

戦いの火ぶたが切って降ろされると同時に二人の漢は拳がベストに届く位置まで前へと勇み出た。

ジャッと空を豪快に切る音と共にアギトの拳が寅の顔面スレスレに放たれたが右拳で弾きガードした。

寅「……」

なるほど。「自惚れるだけの技量」はある。

その一撃を皮切りに連射で追い打ちを叩きこんでくる。

鞘香『先制したのは【牙】!寅選手のお株を奪う高速ジャブ!!!』

鋭く細やかなラッシュが空を裂く音を立てて寅へ降りかかるが、その全てを避けジャブとジャブの極々わずか隙間に拳を割りこみ返した。

【閃光(フラッシュ)】

カウンター……とまではいかずアギトは頭を振って寅の拳は空を切った。寅が追撃を仕掛けようとしたがアギトはバックステップで大きく後ろに後退し距離を取った。それに対し寅は深追いせず構えを取り直しその場でステップを踏む。

鞘香『ファーストコンタクトは終了!品定めをするようにゆっくりとステップを踏む。』

奇しくもボクシング対決となってしまった仕合を控室のモニターで眺める金剛は腕を組んで分析する。

金剛「……」

アウトボクシングに徹するつもりなら、寅には不利な展開だな。

リーチでは圧倒的に【牙】が有利。

牙:201cm
寅:189cm

インファイトの方がまだ勝算は高い。

あの寅が、そこに気付かないとは考えにくいが……。

タンタンっとステップで一定のリズムを刻み二人の距離がジリジリと縮んでいく。そしてタンッと二人のステップ音が重なった瞬間、再びジャブの応酬が始まった。遠からず近からずの位置で立て居るレフリーにとんでもない風圧が顔面を打つ。

チーター服部「ヒイィィッ!」

【閃光】と称される寅の超高速ジャブ、そしてそれに匹敵するアギトのジャブが交差し、その恐怖に頭を抱えて蹲ってしまう。
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