ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

「人間狩り」に興じる坂東。

しかし、既に初見も坂東の「意図」に気付いていた。

故に、再び死地に飛びこむ。

両腕を振り降ろすパターンのタイミングで初見は坂東の懐へと飛びこんでいく。

両腕を振り降ろしたようにみせ、右腕だけ叩きつけずに一気に引き戻す。外れ伸びきっている肩、肘、手首の関節を組み戻し、自分の目の前まで近づいてきた初見の胸へと拳を叩きこんだ。


全て坂東の……計算通りだった。


この時までは。


坂東「……あれ?」

殴り殺した手応えがない。それどころか己の腕が手首よりやや下、肘よりは上の部分から力なく垂れ下がっている。

一瞬の思考の停止。

瞬間、初見が坂東の二の腕を掴むと身体が前へと傾き、一気に加速して一回転し地面に叩きつけられたのだ。

【合気】の技が通じている。

このことに医務室では英はじめが顎に手を添えて頷いた。

英「…ふむ。なるほど。この手があったか。」

春男「どういうことです、先生。」

英「「骨を抑えている」」

あの技は本来、肩や肘の関節を抑える為の代物だろう?しかし、超軟体体質の坂東の関節は通用しない。だから関節ではなく、骨に技をかけた。

そして……

現在初見は坂東を地面に抑えつけながら捉えている上腕骨に力を込めへし折った。腕を形成する二つの骨を完全に折り砕いたことにより、いくら坂東とはいえ右腕はもはや使い物にならなくなった。

坂東「……」

しかし、超軟体体質の怪物はまだ止まらない。右腕が折れ潰れたことにより技の抑えが緩んだ隙を突いて上半身を180度捩じり回転させながら左腕で初見の顔面を殴り潰そうとする。

しかし、初見は容易にその拳を右手で受け捕え、カウンターとばかりに空いている左手で拳を握り素早く三度、坂東の顔面に振り降ろした。

……お見事。一度目は、あえて普通の関節技を極めたわけか。私の警戒心を薄れさせる為に。

全て君の…掌の上か。……やれやれ。

初見はつかみ取っている坂東の腕を引っ張り上半身を起こし上げると軽く蹴り飛ばした。すると重力を無視したかのように坂東の巨体が空へと放り上げられた。

すっかりだまされ……

空中で頭が真下に向いた瞬間、地面に叩き落とした。

初見「初見流合気道「百会投げ」。アンタは、俺にとって……相性最悪の相手だった。だが、結果的に助かったぜ。アンタのお陰で、「絶好調まで持って行けた」ぜ。」

静まり返る闘技場にレフリーの決着の判がでると声援が響き渡った。

チーター服部「勝負有りっ!!!!」

「「「うっうおおおおおおおっ!!!」」」

太宰「おお…!遂に…!!」

柏「ふんっ。」

高田「馬鹿な!」

各々の場所で色んな人間が反応を露わにする。しかし、闘技場で勝利宣言を受けた初見が頭から地面に突き刺さっている坂東にいった。

初見「おいおい、まさか死んでねぇよな?」

ドサッと仰向けに倒れた坂東……の頭がない。潰れたのかと思いきや、ヌゥッと頭が亀のように伸びでてきた。

坂東「やあ参った参った。」

初見「はぁ~~……頸椎を体内にめり込ませて衝撃を軽減したわけね…普通の人間なら100パー死んでるぜ。」

坂東「私だって大ダメージを受けてるよ。しばらくはまともに動けないだろう。私を殺すなら今がチャンスだと思うけど。」

初見「あ、無理無理。人殺しとか俺的にはNGだから。」

坂東「……ああ、そう。だけど君のボスは、太宰と契約を交わしたんじゃないの?」

初見「ああ……まあ、あっちはあっちでなんとかなるっしょ。そもそもアンタを治療させたのだってこっちの身内(小鳥遊柏)がやったことだろうし、全部手のうちなんじゃね?うちのボスはその辺りぬかりねぇから。」

坂東「……君は変わっているんだな。」

初見「……あ、雑談のついでにひとつ教えてくれよ。「その腕の技」、なんで一回戦から使わなかった?」

坂東「ああ、そんなこと?私のカルテを見たなら知ってると思うけど、あの技は、筋肉への負担がすごいんだよ。私も以前より「多少」バルクアップしてるから、なんとか耐えられるけど。それでもハイリスクには変わりないから使うつもりはなかったんだけど、一回戦の後、どうしてもモヤモヤが収まらなくてね。思ったんだよ。もしかして、これが【勝ちたい】という感情なのか、と。どうやら私は、君に勝ちたかったようだ。」

初見「そりゃ光栄なこって。」

坂東「いつかリベンジしていいかな?」

初見「断る。ってゆーか、アンタ死刑囚じゃん。「いつか」なんてある?」

【浮雲】初見泉 三回戦進出
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