ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

本命である右の一撃(必殺)!初見は身体を無理やり捩じり飛び下がった。紙一重で避けたが道着の一部と皮膚を引き裂いて血が飛び散る。

初見「チッ!」

絶命の一撃は躱したものの攻めのチャンスを逃してしまった事に舌打ちを漏らす。そして再び逃げに徹し始めた。

初見の後を追うように闘技場の床が爆裂していく。

「うわああーーーっ!!!また「爆発」した!!」
「テロかよッッッ!!!」
「ほらッ!!?やっぱり坂東の腕が消えてるって!!!」
「んなわけあるかハゲッッ!」
「レフリーなんで止めねぇんだー!?」
「絶対武器使ってるだろ!!!」

観客たちのヤジが飛び交う中、レフリーであるチーター服部の耳についているインカムへ連絡が飛んでいた。

チーター服部「ほ、本当によろしいので?」

連絡の主は闘技会会長の片原滅堂だ。

滅堂『構わん構わん。観客は放っておけい。見抜けん方が悪いんじゃ。水を差すのは野暮ってもんじゃよ。もうじき決着じゃというのに。』

チーター服部「えっ!?」

その時、盤面に動きが生じた。坂東が両腕で挟みこむように腕を振るいこんできたが初見は両腕を振るうことから生まれる決定的な隙、どんなに人外的な攻撃が可能であっても「腕」自体は2本しかない。

初見はそこを突いて坂東の懐に滑りこんでいき細やかな拳の連射を仕掛けた。ズドトドッと肉を打つ音が響くもも、素早く引き戻された右腕ですべてガードされ決定打とはならなかった。さらに、左腕でフックを仕掛け返してくる。

っが……顔面に着弾する寸前で初見はそれを捉えていた。手首を捻り、肘を捉え、坂東の腕を極め倒しにかかる。

しかし!!しかしっ!!!坂東は超軟体体質、関節を極めることは不可能。逆に極めているはずの腕を内側に捻りこみ初見を絞め捕えながら道着を掴んだ。そして一気に腕の捩じりを初見を地面に叩きつけようとしたが、手から重みが消えた。

バサッと布が振れる音……道着の上着だけだ。

初見「テメェは蛇かよ。俺を絞め殺すつもりだったとか?ゾッとしねえな。」

上着を脱ぎ棄てて何とか絞めから脱出した初見が構えを取り直して坂東の前に立つ。

坂東は掴んでいる上着を離し捨てるとコキコキと関節を元に戻しながら言った。

坂東「さっきの技は合気道?私には効かないよ?一回戦観てた?……気の毒に。「相性が悪い」。故に君は、技術で劣る私に殺されるんだ。」

初見「……」

坂東は静かに腕を振り上げると、例の絶命攻撃が三度開始され、当然その攻撃を浴びせかけられる初見は避けに徹底する。

医務室で英が感嘆の声を漏らした。

英「上手くかわすねぇ。」

関林「当たり前よ!」

しかし、それに異を唱えたのは【破壊者】の河野春男だった。

春男「ち……違うと思います。」

関林「どうした春男?何が違うって?」

春男「あ、はい。」

俺、昔は「田舎の方」で暮らしてたんです。毎日、狩りをするような所で。手強い獲物は、すぐには仕留めず追い立てて疲れさせるんです。

そして、動きが鈍ったところを……。

関林「……するってえと何かい?坂東の野郎は、「人間狩り」の真っ最中ってことかよ……!?」

春男が推測した通り、坂東は「狩り」に興じていた。「獲物」を追い立て、体力を削ぐ。

急ぐ必要はない。いつか当たる。それで終わりだ。