ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

レフリーの大声が響き腕が振り降ろされる。

チーター服部「はッッじめァァァァァァッッ!!!!」

仕合開始の合図と同時、先に動いたのは意外にも初見泉だった。

一直線に敵へ間合いを詰めていく。しかし、坂東はゆっくりと腕を振り上げていく、コキコキ、メリメリと異様な音を立てて常人には決して振り上がらぬ角度まで曲がり上がる。

ッと、不意に初見が急ブレーキをかけて停止した。

坂東「!!」

初見「チッチッ!」

軽く指を振ったかと思うと大きく円を描いて回り込もうとするが坂東も初見を正面に捉えるように身体を回して腕を振り上げる。

しかし……またも初見はブレーキをかけたかと思うと全力でダッシュで坂東を中心に駆け回る。

坂東「……」

翻弄させている?隙を突こうとしている?何を狙っているのかはわからないが全力で走り回っている初見の顔全体からドロォッと汗が吹きこぼれだした。

医務室ではそれをみた英が疑問をこぼす。

英「わからないな。闇雲に動き回るだけでは体力を消費する一方。初見の狙いは何なんだ?」

関林「読めねえさ。アイツの考えだけは昔っからな。けどな先生、これだけは断言できるぜ。全く無駄になことをするほど、アイツは勤勉じゃねえよ。」

相変わらず坂東を中心に駆け回り続ける初見。

坂東「……そうか。」

知っているんだね?

鞘香『坂東選手が再度右腕を上げるッッ!!攻めに来ない初見選手に業を煮やしたか!!?』

ジェリー『STRANGEな構えネー。』

関林「……(手刀?肘打ち下し?何を出す?)」

金剛「……(どういうことだ?腕を上げただけで動く気配がない?)」

坂東の動きに十王通信の社長、高田清助がニッと歳のわりに真っ白でキレイに生えろった歯をむき出して笑った。

高田「殺れ。」

瞬間、坂東がアクションを起こした。ドゴォンっと爆発じみた轟音と共に坂東の左目に初見の指が突き刺さっていた。

鞘香『めッッッ目突きですッ!!!!左目を抉り取った!!』

指を引き抜き、距離を開ける初見。

ジェリー『の、NOッッ……!そんなことより……初見の居た位置ガ、突然爆発!!轟音ト共に地面ガ割レタ!!?何事ガ起こったデスッッッ!!??』

ジェリーの言う通り最初初見が居た位置の地面が砕け散っている。

血が流れる左目を押さえながら坂東がいった。

坂東「…素晴らしいじゃないか初見君。」

闘技会の本戦が始まる数日前のこと警察署の一室で小鳥遊兜馬、そして初見泉が柏の操作するパソコンの画面に注視している。

初見「さすが柏だ。警察のこんな裏資料まで見えるわけだからな。」

兜馬「無理を頼んですまないね。柏君。」

柏「いや、調べられることは調べておいた方がいいっすからね。……よし、これが坂東が殺した暴力団員たちの検死結果だ。」

画面にはある程度は綺麗にされているもののモザイクなしのグロテスクな死体の写真が映る。それと同時に兜馬が報告書を読み上げた。

兜馬「被害者17名は頭部外傷により即死。他に外傷無し。生き残った組員達は揃って「被害者の頭が爆発した」と証言。後日の警官殺しも遺体の状況、生き残りの証言はほぼ同一……爆弾などを使用した形跡は……無しか。」

柏「……これは」

初見「……見えてきた。こりゃあ厄介だぜ。」

兜馬「何かわかったのかね?」

闘技者である初見とそれと同等の力を持つ柏は何かに気がついた。

柏「ええ…恐らくですが」

初見「だが、「まだ二択」だ。……確信を得るには、あれが必要だ。」

柏「逮捕時の坂東の診察記録を出してみるか。」

初見「そうしてくれ。」