ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

サーパインが地面へと崩れ落ちた。するとレフリーのアンナ・パウロがやってきて意識の確認を取るが当然反応はなく、決着のジャッジを下した。

アンナ「勝負ありッッッ!!!」

鞘香『あああーーーッッッッ!!!ここで仕合終了だァーーーーッッッ!!!!!!ミャンマーの特攻野郎!願流島に散る!!!おそらくこれが、彼にとっての生涯初のKO負けでしょう。勝ち残ったのは極東のミスターオリエンタル、百目鬼雲山だアアアアアッ!!!』

氷川「(強えッ!!!)」

初見「ケッ。(闘いにくい方が残りやがったか。)」

GPグループの秘書ふたり音市と美音が声をそろえていった。

「「やりましたね姉様!!!」」

微笑みを浮かべ頷くもこちらに退場してくる雲山を見ていった。

理乃「あらあら。あの子ったら。仕合に勝ったのに不満そうね。」

額から血を流し、手足にダメージを受けているも理想的に勝ち抜いた雲山の顔には不満の色が浮かんでいた。

雲山「……」

課題ができたな。百目鬼流にここまで食い下がる人間が居た。……少し、過信していた、体系を見直す必要がある。

百目鬼雲山、三回戦進出。



仕合後、治療を終えて控室へと運ばれたサーパインがゆっくりと意識を戻すと目の前には【闘神】右京山寅と【大物喰い】金田末吉が居た。

寅「目が覚めたか。」

サーパイン「……寅……」

ソファから身体を起こしたが視線を足元に落としている。

寅「二度目の頭突きは迂闊だったな。タイミングを読まれ、威力を利用された。……だが、一度目の頭突きを当てていれば、勝敗は逆だったろう。…………つまりだな、勝敗は紙一重だったってことだ。お前がその気なら、今日の勝敗を次に生かせばいい。…………まぁ、俺には関係ねぇことだが。」

末吉「ニヤニヤ」

なんだかんだで寅はサーパインを気にかけているのを不器用だなぁと笑う末吉。

しかし、サーパインはまるで反応を示さなかった。

寅「……サーパイン?」

サーパイン「……すまねぇ寅……もういい。もう、俺は…………」

「「!!??」」

サーパインの口からこぼれたのは諦めの言葉。何があってもどんな時でもハイテンションで叫んでいた男が終わりの言葉を口にしたのだ。

寅「……「もういい」?「もういい」だと?……サーパイン。テメェ!!何を言ってやがる!!テメェはその程度の男じゃねぇだろ!!一度の躓きがなんだ!!テメェは何度でも立ちあがれる男だろ!!答えろサーパインッッ!!!」

本気の怒りを乗せた叱咤。しかし、サーパインは顔を上げること無くうなだれて静かに言った。

サーパイン「……寅。俺は、もう闘えない。」

寅「……ッ!!…行くぞ、末吉。」

末吉「え…」

寅「胸糞わりぃ。こんな腑抜けに好敵手扱いされていたとはな。テメェには、ほとほと愛想が尽きた。二度と俺の前に姿を現すんじゃねぇ!!」

そう言い捨てて寅は末吉を連れて控室から出ていく。

………………寅……俺にはもう、「次」はないんだ……。
19/100ページ
スキ