ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

観客たちが立ちあがり拍手を送る。春男に肩を支えられて自分の足で退場していくマーヴェラス・セキこと関林ジュンへの手向けである。

「よくやったぞ関ーーーーッ!!!」
「1.4(※)でリベンジだーーー!!!」
「次はいけるって!!!」
「関林いけるって!!!」
「関林!しっかりしてくれ!!!」

※:毎年1月4日開催される超日本プロレス東京ドーム大会の通称

選手登場口に差し掛かると近くにいた男が身を乗り出して叫んだ。

「関林イイイイイッッ!!次は絶対負けないよなぁ!!?」

瀕死の重体かつ両の鼓膜が破れている関林だ笑顔を作り肩を支えている春男にいった。

関林「……何を言ってるか見当はつくぜ……おい春男、こう言ってやれ。」

春男「師匠ッッ!!?」

関林「「やる前に負けることを考える馬鹿いるかよっ!!」ってな。」

春男「押忍ッッ!!!」

【獄天使】関林ジュン二回戦敗退

先に退場した凍夜は岩美重工が貸し切っている大部屋で服を着替えていた。その背後で仁王立ちで居る社長の東郷とまりが唸るように言った。

とまり「「嗅覚」ゥ?」

凍夜「ええ。両耳をやられてしまいましたからね。以前、目をやられた時は随分と難儀しました。その時の反省から、目がダメなら聴覚、そして聴覚が使えない場合の対策を考えたんですよ。敵に付着した汗や血の匂いそれに体臭ですね。「嗅覚」だけでも相手の動きはある程度捕捉できるように鍛錬してある。もっとも「聴覚」ほど高精度じゃあないんですがね。」

とまり「なんだよ。てっきり「コンタクト」を使ったのかと思ったぜ。」

凍夜「馬鹿を言わんでください。土壇場で慣れないものを使うほど、リスキーなことは無い。この「コンタクト」は、次の仕合までゆっくり試させてもらいますよ。」

とまり「ああ、そうしやがれ。うちも「データ」が欲しいからな。」

凍夜「……もし、仕合が止まらなかったら「コンタクト」を使っていたかもしれないですね。」

とまり「?」

最後の血飛沫ですよ。あれを浴びたせいで、一瞬嗅覚が効かなくなり、関林さんの正確な位置を見失った。

凍夜「……彼が一回戦であれほどの傷を負っていなければ、もうすこし苦労させられたでしょうね。」

とまり「へっ。何言ってやがる。」

【心臓抜き】で関林を殺すこともできたんだろ?伝説の傭兵様の本気の殺し技を受けて、あの程度のダメージで済むはずがねぇもなぁ?

凍夜「……フッ。関林さんが耳を「治せる範囲で」壊してくれましたからね。だから会話くらいならできてるでしょう?その気になれば完全に破壊することもできたろうに。俺は快楽殺人鬼じゃないんでね。殺しなんてご免ですよ。」
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