ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

体勢を崩しきれないもののダメージは通る。反撃返しとばかりにストレートを放つ。セキは当然のようにガードせずに直撃を受けた。

セキ「ぐっ!」

凍夜「ハハッ…」

本当に避けないんだ。ありがたい。良いサンドバッグだ。

凍夜はわずかに腰を落としてやや上半身を前のめりにさせながら足を振るう。ストレートよりも速い蹴りの速射砲がセキの全身を滅多打ちにする。

蹴りのラッシュを受け続けるセキ。それでも踏み留まっていたがハイキックが顔面に炸裂し大きく仰け反った。しかし、振り上げた両手をグッと力強く握ると振り戻って頭突きを凍夜の顔面へとぶつけ返した。

鼻の下、いわゆる人中へのヘッドソバットを受けて大きく後ろに飛び下がる。

凍夜「……ペッ」

口元に手を添えて何かを吐きだした。手の中には血だまりと白い歯が一本転がっている。

セキ「おいおい。一発かまされるたびに逃げんじゃねぇよ。さては弱虫だなオメー。いいぜ、好きなだけ撃ってこいよ。人間ってのは「攻撃してる瞬間が一番無防備」なんだぜ?」

凍夜「……「肉を切らせて骨を断つ」。不合理の権化だな。」

足と腕を開いてどこからでも撃ってこいと構えるセキ。それに対して凍夜は両腕を縦に構えるとステップを刻み始めた。つまりそれは……ボクサーstyle。

セキ「なんだ?ボクサーの真似事か?」

凍夜「真似事で十分さ。打ちのめさせてくれるんだからね。」

観客席で眺めている【闘神】右京山寅は凍夜の構えとステップを見つめ、小さく呟いた。

寅「堂に入っている…。」

ステップを刻みつつ凍夜は前へと踏みこんだ。
セキが大振りのラリアットで迎撃しようとしたが凍夜はスウェーで避けながら側面へと回りこみアッパーを脇腹へと叩きこんだ。

セキ「ぐっ!!!?」

今の今までどれだけ攻撃を受けても留まることがなかったセキが明らかに苦痛の表情を浮かべてヨロめいた。

春男「!!」

負傷個所を狙われてる!!

凍夜は一撃入れるとそれ以上の追撃はせずにバックステップで距離を取った。

凍夜「そりゃ痛いよなぁ。恥じることは無い。プロレスラーも人のことですからね。」

セキ「うるあぁぁっ!」

しかし、セキは聞いてないといわんばかりに攻撃を繰り出し返した。なぎ払う様なストレートが繰り出されるが凍夜は丁寧なターンステップで強撃を避けジャブをカウンターに当てた。それでも構わずにプッシュパンチで攻めるセキ。

だが、当たらない。凍夜は今までの攻めとはまるで違い攻撃をひらりとひらりと避けながらピンポイントショット(負傷部位攻撃)を当てては距離を取る。

「なんだあ?タッチボクシングなんか見たくねーよ!!」

「ダンスしてんじゃねえんだぞバカヤロー!!」

控室で皮膚移植の手術を受けながら片目でモニターに映る仕合の様子を見ている金剛は感じ取っていた。

金剛「……」

凍夜が攻め方を変えた。……嫌な流れだな。凍夜はあくまでフリーファイター。徒手格闘の専門家じゃない。

だが……奴は驚異的な速度でこの環境に適応しつつある。恐らく、生粋の戦闘才能(バトルセンス)の持ち主。
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