ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

【極撃】かつて【悪魔の手】小鳥遊柏をもってしても実戦で使えないものとし封印したが金剛が完成させた極技である。

柏「……」

公式の仕合で極撃を使うことはこれが初めて……使わざるをえない敵ってぇことか…!

その一撃を脇腹に受けたユリウスは着弾部を押さえながら大きく後ろに飛び退いた。

ユリウス・ラインホルト、かつて体験したことがない「衝撃」に戦慄。

ユリウス「ヌウゥゥゥッ!!!」

ぬかったわッ!!先ほどの一撃が急所へはいっていたら……!

初めて膝をついたユリウスだが唸りながら身体を起こした。腕を縦に構えて防御態勢を取りながら金剛を睨む。その脇腹は陥没したまま戻っておらず、破壊力を物語っている。

金剛「……」

構えを取ってジリジリと前へにじり寄りながら一気に踏みこんだ。タックルに要領でがっぷりぶつかる。

ユリウス「ヌゥッ!?」

踏みとどまろうとしたユリウスだったが留まることができずに巨体が押し退かされていく。

「ユリウスが下がってる!?」
「さっきの攻撃が聞いてるんだッ!!」

ユリウス「るあぁぁっ!!」

ガッツリと掴み取っている金剛を上から覆いかぶさるように抱きかかえ膂力だけで引き剥がしにかかった。しかし、ダメージにより力が芯まで出し切れなかったのか金剛は身体を振り回してユリウスの腕の中からきりもみに脱出した。床を転がり起き上がる。

ユリウスが其処に攻撃を仕掛けてくるかと思いきや構えは取りつつも後ろへと下がった。

「ユリウスが逃げた!?」
「さっきのすげえパンチを警戒してるんだ!!!」
「ビビるな、攻めろーーッ!!」

観客たちからヤジが飛ぶ。その中で口をつぐんで腕を組み立見席から注視している【闘神】右京山寅はフゥッと息を吐いた。

寅「金剛……。」

これほどの「武器」を隠していやがったか。

金剛「ハッ、ハッ、ハッ…」

全身運動に無呼吸の連打により流石の金剛も息の乱れが出ていた……が、それよりもズキンッと走る痛み。その痛みの元は足、右足の踝部分がどす黒い紫色に腫れていた。

……参ったな。一発でこれか……。

「どうした行けー!!」
「逃げんなハゲ!!」

ヤジが飛ぶ中ユリウスは動かないものの依然として闘志は衰えておらず。金剛の目には見た目以上に巨大な怪物として映っている。

……負傷は軽くない。

だからなんだ?無傷のまま悠までたどり着く?優勝する?そんなムシのいいこと、端から考えちゃいないさ。

【阿修羅】小鳥遊悠と全てをかけて戦うためなら、どんな代償だって払ってやるッッッ!!

痛みの走る右足を踏みしめ【極撃】を打ち放った。

停止からの超加速で距離を詰め待ち構えるユリウスの鳩尾に拳が着弾した。大きく目を開き歯を食いしばるも隙間から血が吹きこぼる……っが!!ユリウスは金剛をその超巨腕で抱き潰しながら吊り上げた。

敗れたりッ、金剛!!!

金剛「ガバッ!!?」

コッ……コイツッ!?インパクトの直前、間合いをずらした!?

金剛の技でいうところの【マッスルカウンター(筋肉反射)】の反射をせずに筋肉を縮めズラすことに集中したのだ。

そして、常人よりははるかに巨体である金剛の身体が抱き潰されていく。

ユリウス「グウオッォォォッ!!」

貴様の「その技」最初に浮かんだ疑問は、「急所を外したこと」。「その技」を再度放とうと下貴様は、距離を取った俺を見て動きを止めた。

そこで推測したのは、「その技の有効射程距離」。おそらく、通常の突きより拳二つ分ほど短い。故に貴様は、正確に急所を打ち抜くことができなかったのだ。

原因は、「足への過負荷」か。

インパクトの瞬間、距離をずらし、急所を外す。如何なる打撃だろうと急所に当たらぬ限り、俺を倒すことは不可能ッッッ!!!