ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

鞘香『さあッ!双方出揃いました!ここを抜けるのは日出国の怪力戦士か!はたまたドイツの筋肉獣か!?日独パワー対決、開戦です!!』

金剛はチラッと自分の手に目を向けた。震えが止まらい。加納アギトの言う「俺の格上」の二人。……察しが付く。

一人は、魏雷庵。

そしてもう一人は…………この男、ユリウス・ラインホルト。

……生まれて初めてだった。この俺が、「力」で劣っているかもしれないと感じたのは……。

小さく震える手を握り拳を固めた。

……よし。弱気はここまでだ。

立見席から怪物二人を見降ろす【闘神】右京山寅に声をかけたのは雇い主である八頭貿易の社長の飯田正が声をかけた。

飯田「どうかね寅君?」

寅「……順当ならユリウスだろう。アレは、二回戦で終わる格じゃねぇ。だが、あの馬鹿が勝ち抜いた。どうなるだろうな。」

岩美重工が宛がわれている大部屋で社長の東郷とまりが不機嫌そうに牙をむいた。

東郷「「ユリウスに勝ってほしい」?私はどっちが勝つか聞いてんだよボケ。」

そうヤジを飛ばされている【自在遊戯】結城・クリストファー・凍夜は詠子に目元に巻かれた包帯を新しいものに取り換えられながら答えた。

凍夜「おいおい。無茶を言わないでくださいよ。俺は格闘評論家じゃないんですから。どっちが強いかはわかりゃしませんて。ただ、闘りやすいのはユリウスの方ですね。怪力だけの筋肉達磨は、肩にハメる方法はごまんとある。なにしろあの二人の身体能力は、大会でも屈指。少しでも楽な方と当たりたいもんですからね。」

闘技場では眼鏡をかけた痩せ気味のレフリーの登場し紹介されている。

鞘香『レフリーは田城もさし!厳格なレフェリングには定評があります。』

田城「両者定位置につけ!!」

金剛「……」
ユリウス「……」

二人は定位置に移動して向き直る。

田城「……よしッ!準備良いなッッ!?構えてェェェェッ始めェェェェェッ!!」

開始の合図と同時に二対の巨人が同時に前へと踏みだして同時に拳を突きはなった。二つの巨拳がぶつかり合うととんでもない爆音と共に闘技場全域に衝撃が広がった。

金剛、ユリウスとも拳を引くと両雄の右拳から僅かに出血する。

金剛「……」

ユリウス「……ふん。」

力は均衡している。この仕合、どちらが勝ってもただでは済まない。

互いの力量を感じ取り合った二人は再び拳を固める。そして先に動いたのは金剛の方だった。ユリウスの腹部に鉄拳をさく裂させる。しかし、その一撃に留まること無くユリウスは横薙ぎに巨腕を振るってラリアットの要領で金剛にぶつけてきたのだ。

その一撃を受けて金剛は大きく後退するも立ちとどまったが、ユリウスはクラウンチスタートの構えを取ると一気に飛びついていった。その巨体から発せられたとは思えないほどのロケットスタート。

軽々に金剛を掴み上げてそのまま闘技場の壁へと突っこんでいった。コンクリ製の壁が砕け陥没しめり込んでいる金剛に追撃の拳が落ちた。しかし、金剛はそれを避けて足を突きだしてカウンターにユリウスを押し返した。

間一髪で腕を挟み入れて直撃を避けたユリウスだが、よろめいたタイミングを逃すこと無く金剛は壁の中から飛び出すと今度はしっかりとユリウスの顔面に拳を叩きこんだ。そして鉄拳の速射砲を浴びせ押しこみ返していく。力押しからの力押しにガードを固めていたユリウスが右手を大きく振るって平手で金剛の横っ面を弾いたのだ。

顔が歪み巨体の金剛が横っ飛びになるもギャリリッと素足でブレーキングをして止まった。

金剛「ペッ」

ユリウス「……」

金剛は血を吐き捨て、ユリウスは指の腹で口元の血を拭い払った。
98/100ページ
スキ