ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー闘技ドーム:地下二階ー

巌流島データセンターでは何百という職員がいくつも設置されたモニターと目の前のパソコンを操作しながら連絡や指示を取り合っている。

「間もなく第三仕合ベット締め切るぞ!」

「82番販売員のハンディが動作不良。至急交換してくれ。」

「第二仕合の払い戻し処理、完了!」

その中のひとり闘技会職員(新人)寺務尾素留男は自分の操作するパソコンに映っている情報に舌打ちをこぼした。

寺務尾「チッ。まーた間違えてら。身長と体重が同じわけねーだろ。ドラえもんかよ。一回戦前に表記ミスを伝えておいたのに。反映遅っせえな~。」

そうぼやく寺務尾に隣の男が口を挟んだ。

「あ。やっぱりお前か新人。余計なことをしてくれたのは。」

寺務尾「は?俺がっすか?」

「ん~まぁ信じられねぇのも当然だけどな。っか判断するまえに上司に確認してな?ま、良い機会だ。闘技者のプロフくらい頭に入れとけ。小鳥遊製薬所属【蔵王権現】金剛。身長218センチ体重218キロ。あの人の身体は、「特製」なんだよ。」

金剛こと鉄剛、19XX年両親の下に生まれる。

彼を取り上げた医師の第一声は、「重ッ!!?」だった。出生時の体重12150グラム。新生児の平均体重(約3000グラム)の4倍強である。

すぐさま検査が行われた。

結果……驚愕の事実が判明する。

金剛の筋繊維密度は、常人の52倍。その力は人類の範疇を大きく上回っていた。筋力だけならあの魏一族ですら金剛には及ばない。

通称「超人体質」。全世界でも過去数件しか確認されていない症例である。

その攻撃力は、コンクリートをも粉砕する。加齢による筋繊維の劣化はほとんどなく、筋力は、生涯成長し続ける。

東洋電力会長の速水勝正が目の前に居る男に語りかけた。

速水「それが金剛という男。お前が斃すべき相手だ。」

片腕で500kgのバーベルを持ち上げている男が直立不動のまま口を開いた。足元の床は重さに耐えかねひびが入っていっている。

ユリウス「くだらん。俺の筋力に勝るものなど、皆無ッ!!!」

そう言うとラインホルトは吊り上げていたバーベルの両端を掴んで押し潰していき遂には球体状に固めてしまった。

速水「フフ……。」

仕上がっておるわ。ユリウス・ラインホルト。ドイツの医学の粋を極み。科学が生んだ「最高の筋肉」を持つ男。

常人ならば絶命に至るドーピングの嵐。極限のハイリスクと引き換えに手にした無敵の肉体。200キロを超える巨体で一流陸上選手並みのスピード。守れば岩をも砕くも鉄壁の鎧となる。

そして……桁はずれの怪力。

生まれながらの怪物VS怪物を超えた人類

見せてやれユリウス、人類の新たな到達点を。
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