ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

突撃系の技の基本は推進力。だが、ただぶつかるだけでは最大の効果は発揮しきれない。それは対象に当たった時点で威力が後方に逃げるからである。

ならば理想的な形というのは?

雲水『それはカウンターだぜ。いいか?力を力で押し返すんじゃねぇ、敵の力も利用してぶち壊してやるんだ!』

向かい来る力→に←ぶつかり打ち返す。

相手のスピードを利用することで破壊力は飛躍的に上昇する。

硬化された肘が雷庵の胸へと突き刺さった。

悪いな、おっさん(雲山)。忘れてたぜ。けど…大丈夫だ。もう二度と忘れねぇから。

氷川「カウンターで入った!!!」

大久保「これはお前効いとるで!!!」

末吉「休まないで悠さんッッ!!!」

吹き飛んでいこうとする雷庵の手首をつかみ取る。

道玄『小僧、大事なことは技を単発では終わらせぬことだ。確実に敵を倒し切るまで続けろ。』

力いっぱいに引っ張りこみながら顔面に【鉄砕】を撃ちこむ。

天地『あらゆる武にとって基本にして主軸は運足(足運び)だ。ただただ速さを追求すればよいものではない、陣取りと思え、理想的な運足ができたなら、全てに先手が取れる。』

打ち据えながら止まらず半円を描く足運びで雷庵の背後に滑りこみ、後ろ手で首を掴み、そのまま吊り上げた。

琥珀『…敵に合わせ、敵を乱す…』

【小鳥遊流:春野ノ型・首断】

雷庵「ゴボォッッ!!ぐっ……ニイィッ!!」

首吊り状態で血を吹きだした雷庵だがまだ笑みを浮かべる余裕を見せた。自身の首がさらに絞まるのも憚らずに大きく身体を反らせてから振り切ったのだ。悪趣味なシーソーゲームのように雷庵が着地して悠の身体が大きく空に投げだされる。

鞘香『ウワァアアッッッ!!?首の力で放り投げたアッッッ!!!???』

ジェリー『OH!!?NECK SPRINGッッッ!!!!』

受け身も取れずに悠は地面へと投げ出された。雷庵は落ちた得物へと向かい駆けだす。

悠「ハァハァ、ハァハァ……!!」

怪物が迫ってくる中、立ちあがる一歩で踏みこみ拳を下段から顎へと【瞬鉄・砕】を打ち放った。

猿渡『ワンパターンな攻撃じゃ相手に読まれちまうぜ』

鳳『剛→柔、柔→剛、剛→剛→柔……って感じにバリエーションを持たせるのよ。』

首を絞められようが顎を穿たれようが魔人は倒れること無くミドルキックを放ってくる。

受け止める、ではなく、受け流す。蹴りの軌道に合わせながら身を翻しつつ向かい来る脚撃に手を添えて力の流れを操作する。

【小鳥遊流:秋宵月ノ型:天地無明返し】

雷庵「効くかぁ!!」

力動操作を力だけで外しにかかる魔人。技が遮断されかかった。しかし、悠も即座にそれに対応する。腕と肩を押さえて地面へと叩き落とし、腕をねじり込みながら雷庵の背へ座り押さえ極めつける。

【小鳥遊流:秋冬ノ型・捻切地蔵】

大の男が背中に乗り腕を捻り上げているにもかかわらず雷庵は唸り声をあげて腕力だけで悠を投げ飛ばした。

悠「ぐっ……!!」

投げ飛ばされも今度はキッチリと転げ受けて立ちあがる。

雷庵「ハァッハァッ、ハァッハァァッ!!」

未だ衰えぬ膂力を見せる魔人だが外しを抜きにしても今までとは比ではないダメージが全身に蓄積していた。

なんだ、コイツの技!!??さっきまでとはまるで別物!!!どこにそんな力を残してやがる……ッ!?

悠「ハァハァ……ハァハァ……スウゥゥゥゥッ……!」

どうだい……師匠方々?
どうだい……ジジイ?

これが「俺」の、小鳥遊流(武)だ。

自然体に拳を打ちやすいように、足を出しやすいように構えを取る。そして酸素をしっかりと肺へ集め、全身へと巡らせる。

【鬼状態】が使えなくても武器はまだある。

供給した酸素を関節と関節の間へと送りこみアブソーバーエアクッションを作り上げる。一瞬関節という関節に走る激痛に耐えつつもそれが発動する。

【小鳥遊流:九頭竜ノ型・翠龍毒】

耐えがたいほどの激痛、それと引き換えに関節の可動域が増し、肉体の限界を超えた動きを可能とする。
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