ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

意識が途切れる、全身が熱っぽく重い、周りの音も消えていく……。

『……やっぱり「鬼状態」を使っちまったか。』

その声だけはハッキリと聞こえてきた。

「…ジジイ…?」

倒れている悠を見降ろしながら語りかけてきたのは小鳥遊弥一だった。もちろん幻影である。

『悪いな悠。俺達の争いにお前を巻きこんじまった。』

「…………謝るとか、やっぱり幻だな……っか、おりが自分で選んだ道だ……勝手に謝るんじゃねぇよ……」

『皮肉な話だ。』

夜見の奴が、お前の命を守る為の「封禁」、成長と共に徐々に外れるようにしていたはずなのに、最終的に「枷」を解いたのが、あの桐生刹那と今お前を殺そうとしている魏の一族とは……皮肉が効き過ぎだぜ。

「……そうだな…とりあえずまぁ、このまま死ぬのはムカつくぜ……。」

『カカッ!ようやく戻ったな悠。どら。ちょっと相手を見てみるか。魏一族。俺が生きていた頃、何度か戦ったことがあったな。俺様にとっちゃあ何でもねぇ相手だったが……もっとも、コイツ(雷庵)は魏の中でも格別にヤバそうだがな。平均的な魏の一族でも純粋な身体能力はお前を上回っている。ましてや相手は魏の中でも化け物の類ときたもんだ。』

「……わかってるよ。ムカついてるが、アイツにはどうやっても勝てそうにねぇや。」

『阿呆~だから「武」を使うんだろうが。』

「!?」

『「武」てのはな、自分より強い奴を倒すためにあるんだ。だから俺は、「武」を教えてやったんだぜ。他の奴(十神将)らからも学んできてんだろ。……ほら、もう十分休んだだろ?そろそろ起きろよ……悠。』

四肢に僅かに力が戻る。まだ、立ちあがれる。

「はぁ……はぁ……」

『「この俺より強くなる」それが、お前が誰よりも強くなりたかった理由だろ?……それでいいんだ。お前は、お前の為に闘えばそれでいい。まぁ、俺より強くなるためにゃコイツに勝てないんじゃ無理だろうけどな』

「……うるせぇよ……黙ってろよ…へへっ…この死人が……」

『口の減らん阿呆が。さぁ、さっさと立て、お前を呼んでる奴らに応えてやれや、そして見せてみろよ、お前の武(小鳥遊流)をな。じゃあな、悠。』

肩を叩いて弥一の幻影が霧散する。長い間話していたようで刹那の夢幻から現実に戻った悠は身体を起こした。

「「「ウオォォォォォオオオオォォォォォっ!!!」」」

「悠ーー!!」「なにしてる速く立て!」「悠君ー!!」「負けるんじゃねぇ!」「悠さん!!」

観客たちの叫び声に混じる聞き覚えのある声たちの叱咤激励。

鞘香『たッッッ……!!小鳥遊選手が立ちあがったーーーー!!!』

ジェリー『Ohhhhhhッッ!!??信ジラレナイッッッッ!!!』

絵利央「……敵ながら天晴れ!」

城「悠さん!!」

雷庵「……それでいい。そうこなきゃ面白くねぇよな。クライマックスと行こうぜ小鳥遊悠ッッッ!!!!!」

魔人が一気に駆け出した。【外し】が切れてもなお、その強靭な肉体は健在で強拳を放ってくる。

……ありがとよ、ジジイ……あの世からよく見とけ……おれの、俺の、小鳥遊流を!!!

自ら雷庵のキルゾーンへと踏みこんでいき放たれる右拳の手首を左手で撫でるように力の流れを反らしながら固定硬化させた肘を敵の胸へとぶちかました!!

【小鳥遊流:金夏秋ノ型・瞬鉄・爆】
92/100ページ
スキ