ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

【禁忌の末裔】魏雷庵が変貌していく。皮膚の色が赤褐色に染まり全身に筋肉の筋が浮き上がる。

悠「……関係ねぇ。誰だか知らねぇがブッ殺してやるぜ。」

雷庵「……お前、人間辞めてるな。俺ほどじゃねぇがな♪」

悠「黙って死ね。」

雷庵と悠の身体がゆっくりと下がっていき、次の瞬間パァンっという音が二つ重なった。そして両雄はぶつかり、さらに今まで以上の殴り合いが勃発する。今まで以上の超高速のラッシュとラッシュが暴風雨のように弾け合う。

城「は、速ッッ!!」

ゆ、悠さん……強くなってる!一回戦で「鬼状態」になった時よりも段違いに!!!

「やはりそうだったか。」

背後から声が聞こえたので振り向くと其処には白衣の男、英はじめがいた。

城「英先生!」

英「悠君の不思議な力、百目鬼家の「鬼」という不思議な力の正体。私の睨んだとおりだったようです。悠君の力の源は「心臓」だ。」

城「し……心臓?」

心臓とは、生物においてエンジンに相当する臓器だ。悠君は心拍数を意図的に速めることができるようだ。

そして、血液循環の速度を爆発的に引き上げ、発生した熱量を運動能力へ変換しているんだ。これが「鬼状態」の正体だ。

英「潜在能力を開放する魏一族の外しとも異なる。実に興味深いよ。」

城「な……なんて無茶苦茶な……!そんなことをして身体への負担は大丈夫なんですか?」

大丈夫なはずがない。

まずは血管の損傷だ。脳内出血による記憶喪失、あるいは混濁。幻覚、幻聴……。

英「そして最終的には心臓が限界を迎える。」

城「げっ、限界ってまさか!!?」

英「……ここからはあくまでも推測だが。心音を聞く限り、現在、悠君の心臓にかかっている負担は、平常時の4~5倍。肉体の損傷も加味すると……彼の命は、風前の灯火だよ。」

城「!!?」

広い闘技場で狂ったねずみ花火のように四方八方へ弾けながら殴り合いを続ける悠と雷庵。顔面を打たれれば顔面を打ち返す。胸を打たれれば胸を打ち返す。電光石火の殴り合い。悠が渾身の前蹴りを雷庵の腹へと突きはなった。

雷庵「効くか阿呆!!」

当然これも同じように蹴り返す。そんな闘いをモニターで眺めていた魏一族のひとり怜一がいった。

怜一「あの馬鹿!なぜ魏の技を使わない!」

ホリス「……「勝負」を楽しんでいる。「蹂躙」を至上の喜びとする雷庵が……こんなことは初めてだ。」

雷庵「ハアアアアアアアァァッ!!!その程度かよッッ!!!!」

俺が魏の技を使えば、一瞬で終わっちまう。まだだッッ!!まだイケるだろう!!!???

もっとッもっとッ楽しませろッッッ!!!!!!

高揚の叫びをあげながら悠を殴り飛ばす。大きく後ろに吹き飛ぶもブレーキングで踏みとどまり垂れ流しになった髪の間から不気味に光る眼で雷庵を睨んだ。

悠「うるせぇ誰だよお前」

英「!!」

記憶の混濁、これはもう……手遅れか?
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