ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

小鳥遊悠の一連の猛攻を眺めていた【滅堂の牙】こと加納アギトは顎に手を置いて小さく首をかしげた。

アギト「(否。強すぎる。小鳥遊悠は、このレベルには到達していないはず。)」

一昨日、私が一蹴した時とは別物だ。あの時は力を隠していたか……?否、力を出し切れなかったのか?

小鳥遊悠……あの男が読めん。

闘技場では更なる猛攻が続いていた。蹴り飛ばした雷庵を無理やり立ちあがらせ【鉄砕】の連打を浴びせる。顔面に、喉に、胸に、顎に……おおよそ人体の弱点たる弱点へ大岩を真っ二つにする破壊力をぶつけ続ける。

雷庵「らぁっ!」

それでも魔人は反撃を仕掛けてくる抉りこむようなフック。だが、悠は即座に反応する。

【小鳥遊流:夏喜ノ型・陽炎】

攻撃を避けながら側面に回りこみながらカウンターにボディブローを叩きこむ。

城「(つッ……!!強いッッ!!一回戦より明らかにッッ!!)」

悠の猛攻に雷庵は舌打ちしてバックステップで大きく後ろに距離を取った。

悠「すぅっ……」

素早く息を吸い悠は大きく前へと踏みこんだ。そのまま前倒れになるのではないかというほど地面ギリギリから地面を蹴り飛ばし一気にブーストして雷庵の顔面を殴り飛ばした。

【小鳥遊流:金夏ノ型・瞬鉄砕】

あまりにも一方的な仕合展開にアンダーマウント社の秘書本山ほたるが叫んだ。

ほたる「や、ヤバいですよ社長!!一方的にやられちゃってますよ!!」

アンダーマウント社社長の太田正彦が全身に汗を吹きだしながらいった。

太田「お、落ち着きなさい本山君!だ、大丈夫だから、ね?」

ほたる「…社長も焦ってません?」

太田「う、うう…」

この展開はマズいぞ!!そ、それに……どうしたんだ禅さん!?自社の仕合中に連絡がつかないなんて今まで一度もなかったのに、ま……まさか……禅さんに何かあったのか!?

その時だった……

雷庵「バーカ♪」

今の今まで滅多打ちになっていた雷庵がラリアットで悠を弾き飛ばしたのだ。たったのひと振りで一回転しながら地面に落ちた。

悠「グッ……」

雷庵「少し強くなったぐらいで、調子こいてんじゃねえよ。まさかこれで終わりじゃねえよな?さっさと立ちやがれ。教えてやるぜ。越えられねぇ差ってやつをな。」

顔面を打ちつけ鼻血を拭いながら立ちあがる悠。それに対して魏雷庵は平然と見下ろしていた。

城「う……嘘!?」

あれだけの攻撃を喰らっておきながら、殆どダメージがない!!?一体、どんなカラクリがあるの!!?

会長専用のVIPルームから仕合を観戦していた片原滅堂が言った。

滅堂「おわかりか、ラルマー殿。これが魏一族じゃ。」

ラルマー「ふむ実に奇怪。あれほどの猛攻を真っ正面から受ければ、いかに打たれ強い闘士とて平然とはしておれぬはずだ?」

滅堂「一回戦を思い出してみなされ。」

英国の雄、茂吉・ロビンソンの猛攻を受けて尚、雷庵は「ほぼ無傷で」一回戦を突破した。

その秘密は「血」にある。

1300年に渡る「品種改良」あらゆる身体機能が現世人類の範疇を大きく上回っておる。例えば痛みへの耐性とダメージ耐性。肉体自体の耐久力と20種にも及ぶ脳内麻薬の居城分泌により、とんでもない深手にも耐えてしまいよる。

打たれ強さを誇る闘技者たちは「後天的に強さを手に入れた人間」じゃが、魏一族は生まれながらにして人を凌駕する耐久力を持っておる。

1300年という時間は、人間が進化するのに十分じゃて。魏一族は「戦いに特化した新人類」ともいえますのう。

ラルマー「なるほど、まさに生体兵器よの。」

滅堂「……しかし、極希におるんじゃよ。魏一族のような人種改良を経ずして、突然変異的に生まれる「怪物(金剛)」がのう。」