ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

小鳥遊悠と魏雷庵が闘技場の中央に並び立つ。レフリーの山本小石が腕を振り上げて叫んだ。

小石「両者準備いいな!?それでは構えてッッ始めェェッッ!!」

闘いの火ぶたか切って落とされる中、護衛者二番隊隊長の吉岡が悠を見つめていた。昨日、鍛錬に付き合っていた時の言葉を思いだす

キレが良すぎる?

悠『ああ。意識と実際の動きがかみ合わねぇ。思った以上に身体が動きやがる。』

吉岡『なるほど。つまり、心身のバランスが崩れていると?』

悠『吉岡。もういっちょ組み手しようぜ。今度は本気でな。この感覚。もしかしたら封禁が解けかかってるの、適応できてきてるんだと思う。もしそうなら、おれはもっと強くなれる。』

……小鳥遊さま。貴方は、やはり私とは違う人間でしたね。

雷庵「ハアァアアアァ」

仕合開始と同時に雷庵が大きく息を吐いた。ボコボコと音を立てて筋肉が盛り上がり殺気が迸る。

選手入場口から見ていた城は身がすくんだ。

城「な、なんですかこれ……。」

これほどの殺気を人間が放てるの!?

雷庵「どーでもいいんだよ。誰が死のうが生きようが知ったことか。ぶっ壊してやる。テメェもだ三下ぁッッ!!!!」

真っ正面から高速で距離を詰め右ストレートを放った。悠の顔面を打ち抜いた……はずだったが手応えがないまま拳が空を切った。

瞬間、カウンターに悠の右ストレートが雷庵の横っ面をぶち抜いた。

【小鳥遊流:金剛ノ型・鉄砕】

金剛ノ型・不壊は敵の攻撃を受ける際に筋肉を強張らせダメージを抑える金剛の筋肉反射(マッスルカウンター)を小規模にした悠verの技である。

対して、今使用した鉄砕は不壊を腕一本に使用して敵にぶつけるという防御技を攻撃に応用した技。

鉄をも砕くその一撃が直撃し雷庵の上半身が大きく反り上がる。悠はそこからさらなる追撃を仕掛けた。

固めた筋肉を緩め上半身を揺らしながら両腕を鞭のように振りはなった。

【小鳥遊流:春秋ノ型・水燕】

不規則な軌道のラッシュが雷庵の前進を滅多打ちにする。

城「す、すごい!」

大久保「アイツ一回戦よりキレキレやん!?」

氷川「速攻で決めるつもりだ!!」

鞘香『うわあああああ!!滅多打ちだアアアアア!!!』

ジェリー『突きの軌道が不規則ダカラ見切るのがVERY難しいんデース!!!!このままだと雷庵選手はTHEENDになりやがるデスー!!??』

機関銃のようなラッシュを浴びせかけていた悠だったが突如その両腕が捕えられた。今の今まで殴られ続けていたにもかかわらず雷庵は補遺然とした様子で掴んだ腕を握りつぶそうとする。

雷庵「お前、どうした?一回戦とは別人だぜ。」

悠「離せっ!」

そう叫んで雷庵の股を蹴り上げた。金的への一撃に流石の魔人も掴んでいた腕を離した。瞬間、悠は地面を蹴りつけて跳ねあがり雷庵の顎に膝蹴りをぶちかます。

しかし、そこで止まること無く大きく後ろに吹き飛んでいく男の首を引っ掴んで地面へと叩きつけた。そして、止めに雷庵の顔面を蹴り飛ばした。

【小鳥遊流:秋冬ノ型:柳】……からの【小鳥遊流:大久保ノ型・サッカーボールキック】

隙も無駄もなく俊足かつ強烈な連続攻撃を目の当たりにした闘技者、そして観客たちは一同に二つの文字を思い浮かべた。

「「「「強いッ!!!」」」」
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