ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:廊下ー

絵利央「あの男は、ワシらさえも欺き利用しようとした。気にいらんのう。幸い、奴は闘技会員ではない。殺しても問題なかろうる」

城「ひっ……」

年寄りのわりに白く生えそろった歯をむき出しにして魏絵利央は笑った。

絵利央「……じゃが、ワシは慈悲深い。小鳥遊悠。主が雷庵を打ち倒すことがことができたなら、友人の命は見逃してしんぜよう。」

雷庵「クカカカッ!だ、そうだぜ?俺は殺しができりゃ何でもいいけどな。」

城「そんな無茶苦茶な……」

雷庵「あん?そこのメス豚はさっきからなにちょろちょろ口挟んできてんだよ。そこの三下よりも下のゴミカスの分際で口開いてんじゃねぇぞ。殺すぞ。」

脅しとかではない。羽虫でも潰す程度にしか思っていない。しかし、本当に殺す意思を城へと向けた。

城「ッ……」

足がすくみ動かなくなる。すると悠が城の前へと一歩踏み出して雷庵に向かっていった。

悠「安っい挑発だな。魏一族ってのは女子供を脅すのが得意なのか?」

雷庵「あァ?雑魚が跳ね返ってんじゃねえぞ。」

一触即発の空気。それをパンパンっと二度手を打つ音が止めた。

絵利央「もう十分じゃろう。本番は、明日じゃ。小鳥遊悠。良い仕合をしようぞ。」


時間は現在に戻り、選手登場口前で佇む城に声をかけた。

悠「城」

城「……悠さん。」

悠「そろそろ行ってくる。禅を殺させるわけにはいかねぇしな。」

城「悠さん…」

悠「おれがあんな野郎に負けるわけねぇだろ?気楽に見てな。あのボケは、おれがぶっ潰す。」

城「……雷庵の言ったことは本当です……私は……自分が腹立たしい。…………わかってたんです。私はぜんぜん強くなれない。私に才能があれば……あの時も自分で言い返せていたのに……。私は悔しい!実際に闘うわけでもなく、勇気のない私がこんなことを頼むのは筋違いかもしれません!お願いです悠さん!!魏雷庵(アイツ)を倒してください!!」

夜見にも久秀にも、おれにもさんざん小馬鹿にされたり酷いことを言われても折れなかった城厘が涙を流し頭を下げてきた。

その言葉を背中に受けて登場口から闘技場へと踏み出した。

鞘香『小鳥遊悠選手入場!!!両者が揃いましたッッッ!!!』

「「「「ワアアアアアアアアアァァアアアァアァァァァッ!!」」」

観客たちの声に包まれる闘技場の中央に立った小鳥遊悠、先に入場した対戦相手である魏雷庵はヤンキー座りで睨み上げてきた。

雷庵「よお三下。ブッ殺される覚悟はできてきたかい?」

悠「はっ。ホント、口だけは達者だなお前。」

立見席から闘技場を見降ろす魏絵利央。

絵利央「雷庵、遠慮はいらんぞ。」

小鳥遊悠。カルラに手を出した報いじゃ。ここで死ね!!

また、この仕合に関して魏迦楼羅はというと魏一族専用の個室で仕合の様子をモニターで眺めていた。

扉の前には魏堀雄とホリスが陣取って、怜一が傍で見張っている。

ホリス「頭を冷やせカルラ。」

堀雄「一族同士の殺しはご法度。お前も知っているだろう?」

怜一「(……コイツ、妙に大人しいな?)」

カルラ「……(悠……前と違う)」

小鳥遊流VS魏一族、いざ開戦!
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