ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:廊下ー

第一仕合が終わり【格闘王】大久保と【氷帝】氷川が次の仕合に出る小鳥遊悠を見送ろうかと廊下を歩いていた。

大久保「あーおもろかった!」

氷川「第一仕合から白熱したな。」

話していると前から一足先に様子を見に行った【大物喰らい】金田末吉が歩いてくる。

末吉「……」

氷川「お、戻ってきた。」

大久保「悠たちはどうやった?何か手伝うことあるか?」

末吉「いやぁ……それがですね…ちょっと様子がおかしいんです。ここは少しそっとしておいた方が良さそうですね。」


松永工業(&小鳥遊堂)専用、引いては小鳥遊悠の控室では一回戦の時と同様のスパッツと家紋入りのボクサーパンツにシャツ姿で柔軟運動をしていた。

その傍で背を向けて立っていた城厘が時計に目をやってから呟いた。

城「……そろそろ入場ですね。」

悠「……おう。」

城「それじゃあ私、先に入場口に行っておきますね。」

悠「……おう。」

昨晩のこと、二回戦壮行会会場の珍風館の裏で小鳥遊悠と城厘が話していると一人の老人が声をかけてきた。

「ちょっとよろしいかの?」

悠「誰だお前?」

城「何か御用ですか?」

暗闇の中から電灯の薄明りの下に出てきたのは小柄な老人。だが、悠は気がついたその「眼」白目の部分が黒い。カルラと同じ「魏の一族」の証だ。

悠「!?」

城「?(あれ、寒気?風邪ひいたかな?)」

瞬間、途轍もない殺気が辺りを包んだ。老人から発せられているものではない、その背後。姿を見せたのは【禁忌の末裔】魏雷庵だ。

雷庵「クカカッ!よお、三下野郎。」

絵利央「小鳥遊悠君。ひとつ、ワシと「ゲーム」をせんか?」

悠「は?」

城「げ、ゲーム……ですか?」

絵利央「左様。賞品は、お主の友人。「烏黒禅の命」じゃ。」

悠「……なんだって?なんで禅が狙われてんだ?」

絵利央「ふぉっふぉっふぉっ。しょうがない御仁じゃ。お主の対戦企業、アンダーマウント社を立ち上げた真の黒幕は烏黒禅じゃ。」

悠「!?」

城「え、そ、それじゃあ太田社長は?」

絵利央「ただの傀儡じゃ。もっとも、闘技会員になっておるのは太田の方じゃがの。会社をここまで成長させたのは、間違いなく禅の手腕じゃ。かなり強引な手も使ってきたようじゃがの。まあそんなことはどうでもええんじゃ。問題は、あの男が魏一族を欺いたことよ。ワシらは、金額さえ吊り合えばどんな仕事も請け負う。……じゃがのう。」

空気が変わる。魏雷庵が放っていた殺気とはまた異質の殺気が悠へと向けられた。
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