ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

摩耶が一歩前へと踏み出した、すると何かに躓いたのか前倒れになっていく。地面に落ちるかという瞬間、グンッと一気に加速して阿古谷に詰まっていく。射程距離内に入るか入らないかの位置で急停止したかと思うとでたらめな動きで攪乱する。

アダム「速ェェッッ!!!」

西品治「アドレナリンか!しかし、いつまで持つか……」

無茶苦茶ながらどこか舞っているような動きから攻撃が放たれる。鞭のようにしなやかなローキック、しかし阿古谷はそれに対応して受け止めた。

スパアァァンっと鋭い音と共に両雄の動きが一瞬止まったが、両雄はすかさず拳を放ちあった。反射速度的には当然、阿古谷が勝った。しかし、一手遅れて伸び始めて摩耶の腕が突如蛇のようにうねり肘で拳を押し退けた。

阿古谷の攻撃は大きくずれ上半身が崩れたところ、顔面を打つ。それでもなお阿古谷は咄嗟に頭を引いて追撃を避けた。

阿古谷「……」

反応速度が上昇した?

解せぬ。摩耶の闘志は折れたはず。何がこの男を動かす?

今までの比ではない暴風雨のような拳のラッシュが阿古谷を襲う。両腕でガードをしているにもかかわらずジリジリと巨体が押し下がりだした。

「ウオオオオッ!!!摩耶が戻ったアアアア!!」

「さっきまでとは別人だぜッッ!!」

観客たちが盛り上がるなか立見席でもひときわ巨体な男が【獄天使】関林ジュンが大笑いしながら叫んだ。

関林「摩耶の野郎っ!土壇場で化けやがった!!」

その巨体な男よりも更に超巨体の【デストロイヤー】河野春男が驚いた声を出す。

春男「し、師匠!なんなんですかあの子!?」

関林「あん?見りゃわかるだろ?ただの天才だよ。」

堅牢な要塞とも見まがう阿古谷のガードを抜けて頬を裂いた。

当たる。僕の攻撃で傷ついている!!コイツは化物なんかじゃない。人間だっ!!

倒せるッ!!!人間なら!!!

油断や驕りがあったわけではない。それでも、それでもなお、一瞬の隙を掻い潜り処刑人は摩耶の首に手を掛けた。そして、そのまま力任せに吊り上げたのだ。

アダム「摩耶ーーーー!!!」

檜山との連携を絶って尚、人類最高峰の反射速度は健在……

西品治「怪物め…!」

「ワァーーー!!!逃げろ摩耶ーー!!」
「無茶言うなっ!!アバラが折れてんだぞ!?」
「アドレナリンが切れたらお終いだ!!!」
「くたばれキチガイ野郎ォーー!!」

阿古谷「すぐには殺さん。己が罪を自覚させた後、嬲り殺す。」

首吊りの状態で更に高さを吊り上げていく。

摩耶「ぐぎっ……」

阿古谷「知れ、正義の……」

瞬間、苦しに歪んでいた摩耶の口元がニィッと歪んだ。阿古谷の腕を両手で挟み叩きながら右目を蹴り飛ばした。

剄を込めた【双按】と決して鍛えることの出来ない眼球への攻撃に流石の阿古谷も首から手を離し目を押さえた。潰れてはいないものの右の視力を一時的に失った処刑人だったが、それでも怯むことは無い。

小癪な真似を。笑止ッッッ!!!悪の小細工など俺には通じんッ!

円の動きで攪乱に入る摩耶を残った瞳で逃さなずに追った。