ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

もはや闘いではなく一方的な蹂躙が繰り広げられる中、アダムがうなだれ落ちている瞬花の肩を引っ掴んで無理やり立ちあがらせた。

アダム「HEY!さっさと棄権しやがれ。ぶち殺すぞテメェ!!」

瞬花「……もう遅いよ。ああなった阿古谷は止められない。棄権を知った瞬間、阿古谷は摩耶を殺す。そして、阿古谷も命尽きるまで殺戮を繰り返す。仕合を止めれば、より多くの人間が殺されることになるんだ。」

アダム「~~ッ!!」

西品治「落ちつけアダム。摩耶はまだ負けていない。」

その言葉を聞いた瞬間、アダムは瞬花を突き飛ばして今度は西品治の胸ぐらに掴みかかった。

アダム「馬鹿かテメェは!!?マヤが殺されちまうぞ!!アイツはテメェの為に命張ってんだぞ!!?テメェには情けってもんがねえのかよ!!!」

西品治「……君は何か勘違いしているようだ。もしかして、俺が善人だとでも思っていたのか?未来ある若者を裏の世界に引き込み、氏の危機に直面せている張本人の俺が、善人とでも思ったか?…俺は、とうの昔に人の道を外れているんだよ。「善き弱者」であることに何の意味がある?いかなる犠牲を払おうとも、俺は必ず闘技会の会長になる。」

アダム「ダンナ…アンタ……!」

西品治「……野望には犠牲が伴うものだ。……だからもう何も言うな…!」

こめかみに青筋を浮かべて歯を食いしばり西品治は怒りで小刻みに震えていた。


阿古谷に馬乗りになられ虫の息の状態のなか摩耶は天幕の開かれたドームの上、青空と白い雲、そして太陽を呆然と眺めていた。

摩耶「……」

あー……また折れた……4本…………いや、3本目だっけ……?もう……痛いのか…………痛くないのかも……わからなくなってきたなぁ……。

ごめんね、鈴猫ちゃん……西品治さん……僕、負けちゃうみたい。

悠君に金剛君…………。

悠『まったく、この前さぁ寅に喧嘩売られて全身痛いわ』

金剛『お前は本当に四方八方に喧嘩売ってるよな』

悠『売ってねぇわ!?』

摩耶『けど、僕もいつか悠君に本気で喧嘩売りたいなぁ。』

金剛『そうだな。』

悠『なんでやねん!っか……』

走馬灯とでもいうんだろうか、記憶がフラッシュバックする。そうだ、あの時……悠君は……。

摩耶の双眼に力が戻る。口を押さえ着けている阿古谷の腕を掴んで歯を立て食い込ませる。小さな口と言えど力いっぱい食いつかれ、阿古谷の身体が一瞬停止する。

阿古谷「…………まだ抗う……!?」

瞬間、阿古谷は摩耶の上から大きく飛び退いた。

鞘香『あ、阿古谷選手がマウント解除!?』

突然の噛みつき脅威を感じた?否、確かにまだ抵抗を見せたことには確かに僅かに驚きはした、だがその噛みつきに注意を引くと同時に、空いている左手が睾丸に伸びていたのだ。

あの状態から唯一ダメージを確実狙えるのは確かに股間だけであった。

だが……解せん。摩耶とは、「こういった闘い」をする男だったのか?
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