ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

処刑人は咀嚼していた摩耶の肉をペッと吐き捨てて口の周りを汚している血も拭かずに言い放つ。

阿古谷「……出血が酷いな。止血しろ。お前はまだ死んではならない。お前は身を持って知るのだ。正義とはかく在るべき、と。」

アダム「FUCKッ!!!」

西品治「落ちつけ摩耶!挑発に乗るんじゃ……」

そう叫ぶ西品治だが……摩耶の様子がおかしいことに気がついた。

立ってはいるものの頭を伏せがちに全身が震えている。

末吉「摩耶さん?」

大久保「様子がおかしいで。」

阿古谷「悪なる者よ。その身を持って知るがいい。正義に抱かれ、怯えて死ね。」

震えたまま棒立ちになる摩耶に阿古谷は真っすぐに近づいてきた。攻撃が届く射程に入った瞬間、摩耶は拳を放つ。しかし、阿古谷は何事もなく全てを避けて両手で摩耶の腕を掴み取った。

そのまま肘を捕え、床へと投げ伏せた。そのまま阿古谷は小さな摩耶の身体に馬乗りとなる。

摩耶「……」

阿古谷「教えてやろう。正義とはなにか。」

そう言うと太い腕を摩耶の口に押し付けた。

摩耶「…………」

阿古谷「喋るなよ。舌を噛むぞ。」

空いている腕を振り上げると摩耶の横っ腹へと叩きこんだのは拳ではなく親指を立てての一撃、脇腹に突き刺さったのだ。

摩耶「がぼっ!」

腕で押さえられている口から血が吹きだす。

阿古谷「肋間神経を圧迫している。筆舌に尽くしがたい痛みだろう?」

摩耶「~……~ッ……!!」

阿古谷「わかるか摩耶。これが「善なる者達」の苦しみだ。いつの世も、虐げられるのは善良なる者。悪徳は栄え、世は荒廃する。……度し難い。度し難い!!」

脇腹に突きさしている親指をより深く突き刺し、捩じり、ついにはボキッとアバラをへし折った。

摩耶「……!!?」

痛みが意識を遮断する。

阿古谷「……気を失ったか。」

刺しこんでいた指を引き抜くと拳を握り同じ個所に叩きつけた。失った意識が強制的に戻される。

摩耶「げはっっ……!」

阿古谷「気を失うことは許さん。肋骨は12対、すなわちあと23本ある。徐々に…徐々に理解していけ、正義の在り方を。苦痛の死をもってお前の罪は浄化され、善なる魂へと昇華されるのだ。さあ、二本目だ。」

阿古谷は再び親指を立てて腕を振り上げる。摩耶はビクビクと震え焦点の合わない眼で虚空を眺めていた。

鞘香『ひ……ひどい!!』

ジェリー『これはもはやBATTLEではナイッ!!YORTURE(拷問)デス!!』

「やめてーー!」
「もう十分だろバカヤローッッ!!」

大久保「レフリー何しとんのやワレッ!?」
氷川「マジで殺されるぞ!!」

レフリー山本小石は観客たちのブーイングを受けると動かなかった。否、動けなかった。

小石「(俺だって止めたいんだよ馬鹿野郎っ!!だけど無理なんだよ!!)」

摩耶自身が「明らかな戦闘不能」に陥るか、「明確な降参」の意思を示さない限り仕合は止められない。

企業同士の面子と利益に影響がある以上、レフリーの俺が安直な采配をするわけにはいかないんだ!!
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