ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

阿古谷の構えが変わると猛スピードで間合いを詰めてきた。攻めに転じたことを摩耶は瞬時に理解し、回避行動に移った。

阿古谷「……」

瞬花『摩耶、1秒後、左に回避。右に回りこんで進路を塞いで。』

指示を受けてその通りに阿古谷が動くと当然のように摩耶は退路を塞がれていた。これには摩耶も驚きの表情を見せたが、次の瞬間には阿古谷のストレートが放たれていた。

胴を穿つ一撃、しかし間一髪でガードが間に合い直撃こそはまのがれたもののヒビの入っている腕に鋭い痛みが走る。

摩耶「くっ……」

痛み止め効いてないじゃん!!

身を翻して後ろに飛ぶ。しかし、阿古谷は全ての動きを予見してるが如く完全に動きを合わせてきた。

『真後ろに2.2m後退。距離をあけないで。』

ならばと地面を踏み上段に崩拳を放った。だが、それも身を屈めて避けられる。

『左ストレート。ダッキングでかわして。』

摩耶「ッ…」

がら空きになった下段から抉りこむような右アッパーが摩耶の顎を砕かんばかりに放たれた。

『右アッパー。上体スウェー回避される。残った右足にロー。』

予見通りアッパーは避けられた。しかし、鋭いローキックはしっかりと直撃した。

摩耶「ッ痛ウゥゥッ!」

痛みに苦悶する摩耶だが距離を取ろうと下がり続ける。

阿古谷「……」

処刑人の耳に次の指示が飛ぶ。

瞬花『阿古谷、時間をかけて攻めよう。摩耶は、身体能力に置いて君に大きく劣っている。機動力さえ潰せばお終いだよ。』

丁寧に、確実に、戦力を削いでいこう。

敵の攻撃は鋭敏かつ正確、こちらの攻撃は的確に捌かれる。今はまだそれに喰らいついていっている摩耶ではあるが、こののままではじり貧である。

アダム「DAMNッッ!!あのFUCKポリ公!クソ忌々しいぜ!」

鈴猫「……なんか、おかしくないですか?まるで摩耶君の動きを予知してるみたい。」

西品治「…………」

摩耶はバックステップで下がりながら少しでも先制しつつダメージを与えようと打撃を放つ。しかし、機動要塞のような堅牢さと機敏さを持つ阿古谷は打撃の雨をものともせずに間合いを詰めてくる。

摩耶「～～ッ!」

この人、すごく強い!!
金田末吉さんは、相手の動きを「先読み」して寅君の攻撃をかわしていたけど、この人は違う!

明らかに僕より後に動いているのに、僕より速い。反射神経がズバ抜けてるんだ!!

こちらが攻めていたのに気がつけば向こうのペース。顔面に向けてリッパーが放たれていた。摩耶は頭を大きく振ってそれを避けた僅かに頬にカスリ出血するも振り向き直った顔には好戦的な笑みが浮かんでいる。

最ッ高じゃん!!!

こんな強い人と闘えるなんて、最高に楽しいよっッ。

阿古谷「(今の攻撃は当たっていたはず。)檜山、至急情報の修正だ。」