ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

摩耶の登場で闘技場が盛り上がるなか対戦相手側の登場口前廊下で若桜生命社長の檜山瞬花が阿古谷清秋の背中に声をかけた。

檜山「……阿古谷、頑張って。」

清秋は黒帯を胴回りで締めながら言う。

阿古谷「「頑張る?」その言葉は、弱者が使うものだ。俺は必ず勝つ。正義に敗北などない。」

そう吐き捨てるとズンッと前へと歩み出た。

鞘香『出たアアアアアッ!!!【処刑人】阿古谷清秋が入場!!第一仕合は【デストロイヤー】河野春男に圧勝!摩耶選手とは対照的に本日も道着で仕合に挑む!!』

摩耶と阿古谷の双雄が闘技場の中央で向かい立つ。相変わらずその体格差は大人と子供そのもの……。

摩耶「一回戦、見たよ。アンタ、すごい闘技者だね。こんな強い相手と闘えるなんてすごく楽しみだよ。」

阿古谷「……」

闘技場全体を見降ろせる闘技会会長専用のVIPルームで片原滅堂が笑いながらパチパチと手を打った。

滅堂「ラルマー殿、うぇ~~るか~~むとぅじゃぱ~~ん♪」

会長の横に立つのはタイ財政府の支配者ラルマー13世。

ラルマー「御老、壮健であったか。それにしても、日の本の格闘士達もなかにかやるものよ。」

滅堂「ざっちゅらいと♪おっしゃる通りですぞ。我が国最高峰の戦士たちの死闘、とくとご覧あれ。」

場所は移って同じように闘技場全域を見渡せるが吹き抜けになっている立見席。

末吉「摩耶選手はシャツを脱いできましたね。」

氷川「あの体格差だからな。良い選択だ。」

大久保「いや~?こりゃミスかもしれへんで?確かに服を着とったら掴まれるリスクは倍増する。あと、服を使った絞め技も警戒せなアカン。あの坊(ボン)もそう考えたんやろな。……けど、よう考えてみ?ここの床はやわらかいマットちゃうねん。あの坊は拳法家で独特な動きも多いこんなとこで転げ回ったらあっという間に擦過傷だらけや。」

末吉「な、なるほど……」

氷川「……あれ?お前も上半身裸で仕合してなかった?」

大久保「「肌質」の違いや。色んな格闘家を見てきたけどな。あの坊みたいな肌質は、いわゆる「切れやすい肌」やねん。一度出血したらなかなか血が止まらんタイプやな。ああいう肌質の奴は、多少不利でも着衣しとかなあかんわ。寝技なんかしようもんなら全身血まみれで自滅してしまうで。」

鞘香『さぁ、本仕合のレフリーは山本小石!!』

スキンヘッドで眉の濃いやや小太り気味の男が両雄の間に立って声を張る。

小石「準備いいかぁっ!!?」

鞘香『さあッッ!!時間一杯だ!!三回戦に駒を進めるのは【黒天白夜】か!?はたまた【処刑人】か!?』

小石「よし!!準備いいな!?構えてッッ!!始めエェェェェっ!!」

ついに、仕合の火ぶたが切って落とされた。
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