ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:廊下ー

【滅堂の牙】は小鳥遊悠のこれ以上の勝利は「不可能」と断言した。

悠「……」

それを聞いて悠は舌を出したまま固まった。

久秀「ちょ…」

なにを言いかけた久秀だったか悠が手を伸ばしてそれを制した。

悠「口では何とでもいえるよなあ?ポマード野郎。ただの一回、おれを蹴り飛ばしただけでおれの全部を理解したつもりかよ?それともアレか、熱狂的なおれのファンか?」

アギトの真っ正面まで近づいてそう言い返した。やってることと言ってることはそこらのヤンキーのようだ。

空気が凍った。次の瞬間、悠の横顔にアギトの蹴りがさく裂した。天井、壁、床とぶつかり跳ね転げながら叩き落ちる。

久秀「悠!」

蘭「!!」

久秀と蘭の二人の前に金剛が巻き込まれないように立ちはだかった。

アギト「話にならんな。前と何も変わっちゃいない。もう一度いってやろう。お前は弱い。」

無惨、仕合直後の加納アギトにたった一発の蹴りで吹き飛ばされた……。これでは依然と何も変わっていない結果……。

その時、倒れ落ちてピクリともしない悠の背後に黒いスーツの二人の男が現れた。

鷹山「仕合以外の私闘は禁止だ。大人しくしていろ加納。」

アギト「……私闘?「路傍の石」を蹴っただ家のことだ。そうだろう、金剛?」

……三羽鳥の揃い踏みか。御前・片原滅堂が有する最高戦力。

【牙に最も近い男】鷹山ミノル

そして

【先代滅堂の牙】王森正道

金剛「……路傍の石、か。牙ひとつ教えといてやる。お前が今蹴った奴はな、逃げも隠れもするし嘘つき野郎だ。」

アギト「……何が言いたい?」

金剛が軽く顎をしゃくった。その方向にアギトが視線を移すと……居ない、今のさっきまでそこで地に伏せた男の姿が消えている。

悠「ところでよぉ、このちょっとトロそうな顔した姉ちゃん誰だ。なんかどっかで見たことあるような顔つきではあるんだが。」

蘭「まぁ、失礼な子ー。」

アギトが振り返り直すと側に立つ金剛の背後、いつの間に移動したのか小鳥遊悠が平然とした様子で城厘に話しかけている。

これには、鉄面皮のアギトも僅かに表情に驚きの色を見せた。

アギト「貴様…。」

確かに蹴り飛ばした、その証拠に小鳥遊悠が跳ね飛んでぶつかった天井や壁に凹みが残っている……。

悠「なんだよ、お前だって大久保のサッカーボールキック真っ正面から受けてノーダメだったろうが。」

金剛の背後に隠れつつべーっと舌を出してアギトに挑発する。

金剛「俺の後ろで言うなよ……。」

アギト「貴様…。」

牙が悠に近づこうとした瞬間、【先代の滅堂の牙】が口を開いた。

王森「アギト、そこまでにしておけ。御前の伝令を伝える。」

アギト「……」

御前という言葉を聞いて、ピシッと姿勢を正しアギトは振り直った。王森はアギト、金剛、悠の三名に目を向けて一言だけ伝えてきた。

王森「御前より闘技者に伝令。「上がってこい」以上。」

闘技絶命トーナメント一回戦全仕合終了

第一仕合勝者【黒天白夜】摩耶

第二仕合勝者【処刑人】阿古屋青秋

第三仕合勝者【禁忌の末裔】魏雷庵

第四仕合勝者【阿修羅】小鳥遊悠

第五仕合勝者【蔵王権現】金剛

第六仕合勝者【モンスター】ユリウス・ラインホルト

第七仕合勝者【自在遊戯】結城・クリストファー・凍夜

第八仕合勝者【獄天使】関林ジュン

第九仕合勝者【吼える闘魂】鎧塚サーパイン

第十仕合勝者【魎皇鬼】百目鬼雲山

第十一仕合勝者【抜拳者】氷室薫

第十二仕合勝者【美獣】桐生刹那

第十三仕合勝者【浮雲】初見泉

第十四仕合勝者【血染めの象牙】坂東洋平

第十五仕合勝者【闘神】右京山寅

第十六仕合勝者【滅堂の牙】加納アギト

これは序章に過ぎない。

二回戦、さらなる苛烈な戦いが、闘技者たちを待ち受ける……。
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