ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

立ち上がるアギトから距離を取って注視する大久保。その様子に片原滅堂が陽気に笑った。

滅堂「ホッホッホッ!困った子じゃわい。ウォームアップ代わりに大久保君と遊びたかっったようじゃ。仕方ないのう。ワシは最初から全力でやれと指示しとったんじゃがの~♪」

熱海「……(ぬけぬけとよく言いますね。タヌキジジイ。)」

滅堂「まあいずれにせよここからがアギトの、本意気。リハーサルは終わりということじゃ。」

アギト「…………お前の打・投・極全てわかった。お前は「俺」に決して届かない。」

大久保「!?」

一切表情をの変化がなかったアギトがニタァァっと笑う。

金剛「終わりだ。大久保直也は強い。俺が想定していた以上に。ここまでよく食い下がったというべきだろう。だが【牙】が本気になった今、打つ手はない。大久保直也の力量は、人間の中の最高峰程度。人に怪物は倒せない。もはや大久保の攻撃は【牙】には届かない。」

恐れること無く突っこんでいった大久保、金剛の予想とは裏腹に渾身の一撃がアギトのテンプル(こめかみ)ウ穿ったのだ。

金剛「!?」

氷川「!?」

悠「!?」

この結果に金剛だけでなく他の闘技者たちも一様に驚きを隠せなかった。

アギト「……!!」

アギトの視界が傾く。

大久保はそのまま突っこんでいきアギトの身体をホールドすると全身の力を使って飛びあがって、地面へと叩きつけた。全体重を乗せたホールダウンにアギトの肺が潰れ口から血と空気が吐きだされる。

大久保は止まらない、固めた拳を顔面へと振り落とす。1発目は直撃、それに続いて2度3度とハンマーのように何度も叩きつける。ガードしながらアギトは大久保の腕を掴み、身体を跳ね起こしながら大久保を投げ飛ばした。しかし、大久保は猫のように空中で身体を切って、着地すると再びアギトの方へ突撃していき、顔面に膝蹴りを浴びせた。

かみ合わない。

これが大久保直也の真骨頂。

総合格闘技とは、文字通りあらゆる攻撃手段を持つ格闘術。すなわち……その攻撃、変幻自在。

打・投・極…アギトのあらゆる格闘技術は、大久保を上回っていた。果たして、大久保がアギトを倒す方法は皆無であるか?



単独の技術で及ばないなら、「複合」で挑む。

アギトが打撃戦を望めば組み技を仕掛け、グラウンドを望めばスタンドで応じる。決してかみ合わせず、アギトのペースを乱す。

打撃を戦に持ちこもうとしたアギトに大久保は絡みついていった。【打即投】首を取りそのまま投げ落とした。次の瞬間にはチョークスリーパーをかけた。【投即絞】アギトは足を大きく振り上げて背後の大久保を蹴り飛ばしにかかるがすぐにチョークを解いて距離を取った。【離即組】そしてアギトが立ちあがった瞬間胸に潜りこんで組みついた。

アギト「ッッ!!?」

【組即投】そのまま吊り上げてバックドロップでアギトを投げ落とした。【即打】動きを止めること無く頭部に蹴りをお見舞いする。アギトの身体は人形のように吹き飛んでいく。

「「「ウオォォォォォォッ!!」」」」

「顔面モロっっ!!!」
「死んだ!!?」
「【牙】死んだッッ!!?」
「ついにッッ!!?ついに【牙】が負けるのか!!??」
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