ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】
ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー
開始宣言と同時に動いたのは大久保だった巨体から出たとは思えないほどのスピードで間合いを詰め、攻撃が届く間合いに入ると力強く地面を踏みしめて拳を振り上げる。
アギトは即座に腰を落として両腕をあげてガードの体勢に入った。
が……大久保は振り上げた拳を解いた、そして重心をさらに低くしてタックルに切り替えてアギトの懐に潜りこみながら足を掴みにかかる。しかし、アギトの反応も早かった。高速で可変する攻撃に対応したのだ。大久保の両肩を押さえ潜りこみを阻止した。
ザッザッザッザッと物凄い音を立てて地面をこすりながら下がっていくがビタッと止まった。瞬間、膝蹴りが大久保の顔面を強襲する。掴んでいたアギトの両肩を突っぱねて上半身を後ろに戻した、それでも膝蹴りは大久保の鼻先を掠った。それだけで両方の鼻の穴から血が出る威力……。
大久保が立ち上がろうとするなか、アギトは攻撃に出ていた。ローキックが炸裂する。スパアァァンッと何かが破裂したかのような音。大久保の腿が青紫色に腫れあがる。その威力は巨大な刃物で斬られたのかと錯覚するほどだ……。
歯を食いしばって耐える大久保だがアギトは止まらずに攻め続ける。フック、アッパー、ストレートと基本的なコンビネーションだが当たればヤバいのはわかる。紙一重で連続攻撃を避け続けたがミドルキックが着弾した。ガードが間に合い直撃はしなかったものの、当然のように受けた腕が真紫になって腫れあがる。
一撃一撃が必殺レベル。
頭に来たのか、大久保は大振りに殴りかかっていくが一手早くアギトは両手で後頭部を掴むと引っ張りこんで膝蹴りを腹部に打ちこんだ。そしてそのまま頭をホールドして何度も膝蹴りを打ちこんでいく。
ほぼ密着状態で蹴り続けられるが大久保はガードを固めて耐え忍んだ。しかし、アギトは掴んでいた頭を思いっきり下げさせて頭部目掛けて膝蹴りを放とうとした。
だが……大久保は自分からより深く潜りこんでアギトのボディに頭をめり込ませながら、アギトの顎を拳で穿った。このカウンターには流石のアギトも口から血をこぼして動きを止めた。瞬間、大久保はアギトの足に腕を絡め、身体をさらに密着させると持ち上げて飛びあがった。二匹の雄の身体は一瞬空に上がり、アギトを背中ら地面へと叩き落とした。
仕合開始から34秒。大久保直也、テイクダウンに成功。
大久保直也の格闘キャリアは中学一年、レスリング部からスタートする。元々は、将来プロ入り確実といわれた、野球少年だった。格闘技未経験ながら規格外の体格を買われ、レスリング名門校からスカウト。大久保、人生の転機だった。大久保はレスリングでも瞬く間に頭角を現した。中学時代全国大会ベスト4。
高校三年時全日本選手権、優勝。世界大会常連選手を抑えての優勝だった。
この大会の後、大久保はレスリングを辞めた。
大久保はアマチュアボクシングに転進。ここで持ち前のセンスを発揮し、短いキャリアながら国指定強化選手に選ばれる。
だが……ほどなくして、大久保はボクシングを辞め、総合格闘技の門を叩いた。ボクサーとしての活動期間は、わずか二年であった。誰もが冷ややかな視線を送った。「どうせ総合も長くは続かない」と。
しかし、世間は知らない。レスリング引退表明をして以来――大久保は一日も欠かさずレスリングの鍛錬を継続していた。
大久保は気付いていた。総合格闘技における組み技の重要性に。
誰かが言った。「組み技の強さは、努力の量に100%比例する。」
素人のパンチが「偶然」プロボクサーに当たることはあるかもしれない。だが、組み技に「偶然」は存在しない。
存在するのは、「必然」のみ。
開始宣言と同時に動いたのは大久保だった巨体から出たとは思えないほどのスピードで間合いを詰め、攻撃が届く間合いに入ると力強く地面を踏みしめて拳を振り上げる。
アギトは即座に腰を落として両腕をあげてガードの体勢に入った。
が……大久保は振り上げた拳を解いた、そして重心をさらに低くしてタックルに切り替えてアギトの懐に潜りこみながら足を掴みにかかる。しかし、アギトの反応も早かった。高速で可変する攻撃に対応したのだ。大久保の両肩を押さえ潜りこみを阻止した。
ザッザッザッザッと物凄い音を立てて地面をこすりながら下がっていくがビタッと止まった。瞬間、膝蹴りが大久保の顔面を強襲する。掴んでいたアギトの両肩を突っぱねて上半身を後ろに戻した、それでも膝蹴りは大久保の鼻先を掠った。それだけで両方の鼻の穴から血が出る威力……。
大久保が立ち上がろうとするなか、アギトは攻撃に出ていた。ローキックが炸裂する。スパアァァンッと何かが破裂したかのような音。大久保の腿が青紫色に腫れあがる。その威力は巨大な刃物で斬られたのかと錯覚するほどだ……。
歯を食いしばって耐える大久保だがアギトは止まらずに攻め続ける。フック、アッパー、ストレートと基本的なコンビネーションだが当たればヤバいのはわかる。紙一重で連続攻撃を避け続けたがミドルキックが着弾した。ガードが間に合い直撃はしなかったものの、当然のように受けた腕が真紫になって腫れあがる。
一撃一撃が必殺レベル。
頭に来たのか、大久保は大振りに殴りかかっていくが一手早くアギトは両手で後頭部を掴むと引っ張りこんで膝蹴りを腹部に打ちこんだ。そしてそのまま頭をホールドして何度も膝蹴りを打ちこんでいく。
ほぼ密着状態で蹴り続けられるが大久保はガードを固めて耐え忍んだ。しかし、アギトは掴んでいた頭を思いっきり下げさせて頭部目掛けて膝蹴りを放とうとした。
だが……大久保は自分からより深く潜りこんでアギトのボディに頭をめり込ませながら、アギトの顎を拳で穿った。このカウンターには流石のアギトも口から血をこぼして動きを止めた。瞬間、大久保はアギトの足に腕を絡め、身体をさらに密着させると持ち上げて飛びあがった。二匹の雄の身体は一瞬空に上がり、アギトを背中ら地面へと叩き落とした。
仕合開始から34秒。大久保直也、テイクダウンに成功。
大久保直也の格闘キャリアは中学一年、レスリング部からスタートする。元々は、将来プロ入り確実といわれた、野球少年だった。格闘技未経験ながら規格外の体格を買われ、レスリング名門校からスカウト。大久保、人生の転機だった。大久保はレスリングでも瞬く間に頭角を現した。中学時代全国大会ベスト4。
高校三年時全日本選手権、優勝。世界大会常連選手を抑えての優勝だった。
この大会の後、大久保はレスリングを辞めた。
大久保はアマチュアボクシングに転進。ここで持ち前のセンスを発揮し、短いキャリアながら国指定強化選手に選ばれる。
だが……ほどなくして、大久保はボクシングを辞め、総合格闘技の門を叩いた。ボクサーとしての活動期間は、わずか二年であった。誰もが冷ややかな視線を送った。「どうせ総合も長くは続かない」と。
しかし、世間は知らない。レスリング引退表明をして以来――大久保は一日も欠かさずレスリングの鍛錬を継続していた。
大久保は気付いていた。総合格闘技における組み技の重要性に。
誰かが言った。「組み技の強さは、努力の量に100%比例する。」
素人のパンチが「偶然」プロボクサーに当たることはあるかもしれない。だが、組み技に「偶然」は存在しない。
存在するのは、「必然」のみ。