ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

英「坂東君。私はもう闘い飽きたよ。そろそろ殺らせてくれたまえ!」

首を狙って横振りの斬撃を繰り出す。坂東は身体はそのまま首だけを大きく横に倒して避けた。そして地面を踏みこんで蹴りを繰り出した。しかし、英はしゃがみこんでハイキックを避けながら一閃、踝から脹脛にかけて切り裂いた。

そして、即座に二度タッタッと後ろに跳ねて坂東から距離を取る。

坂東「……」

英「危ない危ない。良い蹴りを放つじゃないか。」

坂東「……もし君がこの仕合から生還できたら、頭の医者にかかってみるといいよ。」

英は血濡れた骨刀をひと舐めしていった。

英「おや?心外だなあ。私はこれでも医者だよ。自分の精神状態くらい把握してるさ。客観的に見て私は、正常とは程遠いね。」

死の医師の大きく腰を落として飛びかかった。トドメ、次の一撃で殺すという本気の前進。坂東はその場で動かず棒立ちでいる。

坂東「うん、そうだ思った。」

まっすぐに突っこみ骨刀が坂東の中心を深々と貫き背中から刃が飛び出すと同時に大量の血をまき散らす。

決着となった……英はじめの勝利、と思った瞬間、坂東は頭を掴んでそのまま首を後ろにへし折ったのだ。

掴んでいた頭から手を離すと突き刺さった刀骨が坂東の胸からずり抜けながら倒れ落ちた。

鞘香『けっ……!決着ウウウウウウウウゥゥゥッッッ!!!!おッッッ折ったーー!!!坂東選手、英選手の首を一瞬でへし折ったアアアアーーーー!!!こ……これは……!英選手の生存が危ぶまれる事態となってしまいました!!』

確実に致命的な首の折れ曲がり方をして英はじめはピクピクと痙攣している。

慌てて担架がやってくる様子を坂東は見下ろしていた。

坂東「……(危なかった。)」

英君が狙ったのは、私の鳩尾。正しい判断だ。正中線への攻撃は非常にかわしずらい。ましてや身体の中心である鳩尾付近への攻撃は……咄嗟に「脊髄をズラさなければ」死んでいたのは私の方だったたろう。

残酷な仕合の結末を迎えるも坂東を闘技者として連れ出した十王通信の高田清助は軽やかに笑った。

高田「ホッホッホッ!坂東君の関節の柔軟性たるや。攻守ともに死角なしだよ。」

……それにしても法務大臣殿も人が悪い。坂東の派遣を許可する一方で、「刺客」を送りこむとは……この高田を利用するとは……少々驕りが過ぎましたな。

政府の全てなど最初から想定済み。私が闘技会を掌握した暁には、それなりの代償を払ってもらいますよ。

坂東「……」

退場してきた坂東が高田の元へと近づいてきた。

高田「おお坂東君。ご苦労だったね。少々傷はおったが、大したことはなさそうだ。次もその調子で頼むよ。」

対戦相手側、帝都大学側の廊下では担架で運ばれた英が静かに横たわっていた。その側では秘書兼看護師の吉沢心美が英の胸で涙を流している。

心美「先生の馬鹿!!何で勝手に死んじゃうんですかーーー!!!」

城「吉沢さん……まさか……英先生がなくなってしまうなんて……」

凛「ちょっと不気味だけどいい人だったッス……」

好子「沢田を治療してもらった礼を、まだしてなかったのに……」

エレナ「私も…!兄様を助けてもらったお礼を何もできなかった…!」

迦楼羅「……仕方ないんだよエレナ。死んだ人間は二度と生き返らないんだ…。」

「お嬢さんたち、少し下がっていたまえ。……ひどいザマだな、英。」

そういって悲しむ女性陣の間を抜けて英へ近づいてきたのは帝都大学総長の太宰由紀夫だ。

心美「総長ッッッ!!そんな言い方酷いです!!英先生は命を賭けて闘ってくれたんですよ!!?」

太宰「左様。それでは、命を懸けた成果を問ふてみよう。」

着物の袖をまくり上げて死んでいる英を抱きかかえた。

心美「そ……総長?いったい何を……?」

折れ曲がった首をゴキンッと元に戻した。

英「ふう…生き返った。」

すると確実に死んでいた英はじめが目を開いて声を出したのだ。それに対して側にいた女性陣(カルラを除く)が悲鳴を上げる。

「「「「ギャアアアアッ!!??」」」」
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