ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

英はじめが登場し、次なる闘技者の紹介を鞘香が開始するが闘技場は今までは違う緊張が広まっていた。

鞘香『続きまして、対戦闘技者の入場です!!今大会、またしてもとんでもない刺客が現れた!!当時、日本犯罪史上類を見ない凶行と恐れられた【素手による連続殺人】!!30年の時を超え、あの殺人鬼が帰ってきた!!身長201センチ体重147キロ闘技仕合初参戦!!十王通信代表闘技者、坂東洋平エエエエッッッ!!!』

上半身は裸で胸板の厚さやふとましい腕は並の闘技者よりも分厚い。また、下半身は白い囚人ズボンだ。

坂東「へえ…随分小柄な相手だね。さて……どうするかなあ?」

【血染めの象牙】坂東洋平

英「フフフ…絞首刑で殺せない男…そそるよ。ぜひ私の手で解剖してみたいね……」

坂東「…どうやら、君もろくな人生を歩んでいないようだ。私もひとのことは言えないけど。」

観客たちは声も潜めずに坂東のことを口にし出す。

「げえー…ホントに出てきたよ…」

「坂東洋平…マジモンのシリアルキラーか。」

「え?誰?私知らない。」

「30年前の事件だろ?俺まだ生まれてねーし。」

「当時は大騒ぎだったなぁ。」

「っていうか、坂東ってあんな感じだっけ?背は高かったけどもっと華奢で髪の長い男だったような……。」

「30年も経てばそりゃ老けるよ。」

立見席から闘技者たちを見ていた小鳥遊悠が呟いた。

悠「気持ち悪ぃ……なんだアイツら。」

城「え?」

悠「アイツら……他の闘技者となんか違う。」

城「どういう意味ですか?」

悠「……得体の知れなさは両方だが、アイツらまるで闘技者って感じがしないんだ。」

実況の鞘香が実況解説席に戻るとレフリーのチーター服部が中央に立った。

チーター服部「準備はいいな!?それでは構えてっ!!」

英「……」

坂東「……」

そう宣言するが英は白衣のポケットに手を突っこんだまま動かず、坂東は手を軽く振っているだけだ。

チーター服部「……お、おい?どうしたお前たち?」

英「フフフ…私は格闘家じゃない。構えは必要ないよ。」

坂東「彼の言う通りだ。いつもどおりやらせてもらうよ。」

チーター服部「~~ッ、好きにしろッ!!始めっ!!」

殺人鬼VS死の医師 いざ開戦!!

坂東「……さて…始めてはみたものの……とりあえずこの子を殺せばいいんだろう?…あまり気が進まないけど……まあ、仕方ないか。」

坂東洋平はおもむろに前へと歩きだす。しかし、英は相変わらず棒立ちた。そこへ巨大な手が伸びて振り降ろされた。

大振りだがかなり早い一撃、英は半身を翻しながらステップで下がった。坂東の側面へと回りこむと人差し指と中指を揃えて巨腕目掛け何度か突きを浴びせた。しかし、どう見てもダメージがあるようなものではない。

坂東は睨んで今度は横薙ぎに腕を振るう。しかし、これもしゃがんで避け懐に潜りこむと指での突きを浴びせかける。

坂東「…………「格闘家じゃない」なんてよく言うよ。経穴を突いたね。武術の世界では、檎拿術(きんなじゅつ)と呼ぶのだったかな?」

英「さすが元医大生。よく勉強している。私の流儀は霊枢檎拿術(れいすうきんなじゅつ)。」

【霊枢檎拿術】

中国最古の医学書「黄帝内径(こうていだいけい)」に記された最古の檎拿術。

指先を鍼(はり)に見たて、人体の急所である経絡経穴に突き込む。霊枢檎拿術を極めた術者は、一突きで相手を廃人にすることも容易であるという。
35/100ページ
スキ