ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

立見席側の廊下では余裕を見せる小鳥遊グループ社長の小鳥遊兜馬と全身を身震いさせながら立ちふさがる義武不動産の社長義武啓朗の姿があった。

兜馬「おや?何の用ですかな?義武社長」

笑顔で語りかける兜馬に地団太を踏んで義武は叫んだ。

義武「っ~~!い、いい気になるんじゃないわよ!!こんなもんじゃ私は終わらないわよッッ!いつか必ずあんたを倒してやるんだから!」

兜馬「…ふむ?随分と呑気ですな義武さん。貴方、自分の置かれた立場わかっていないようだ?」

義武「何ですって!??」

兜馬「貴方、仕合前に暴力沙汰を起こしたそうですね。」

義武「ふんっ!白々しい!!アンタが送った刺客でしょ!!!私を脅迫するつもりだったみたいだけどおあいにくさま!返討にしてやったわよ!!!仕合に勝ったからって調子こいてんじゃないわよ!!!見てなさい!!あの男から証言を引きだして、小鳥遊グループを失格に追いこんでやるんだから!!」

立場は自分が優位、絶対的な証拠が自分にはあると強気に出る義武だったがそれでも兜馬の余裕は揺るがなかった。

兜馬「……おやおや?よろしいんですか?そんなことをしたら、貴方は闘技会員資格を失うことになりますよ?」

義武「ん……?は……?……は?」

何を言っているのかわからないという様子の義武に兜馬は子供を諭すように語りかける。

兜馬「貴方が部下に暴行を命じたのは本間清という男。傭兵上がりの始末屋だ。金さえ払えば、どんな汚い仕事も請け負う便利な男……と聞いていますよ。」

義武「そっ!それがなんだってのよ!?」

兜馬「その本間という男ですが……先日、闘技会員になったんですよ。私の推薦でね。」

義武「!!?」

兜馬「義武さん、貴方もご存知でしょう。会員同士の私闘はご法度。この件が発覚すれば、義武不動産は闘技会から永久追放だ。」

義武「……これが狙いだったのね。最初から私をカタにハメる為に。」

兜馬「おいおい、人聞きが悪いな。私は、あの男を闘技会員に推薦しただけさ。」

義武「な……なんでよ兜馬!?アンタがその気なら私を棄権させることもできたはず!初見の体力温存の為にも、そうした方がイイに決まってるのにどうして!?」

笑顔を崩さなかった兜馬の顔つきが急に眼光鋭くなり義武を射抜いた。

兜馬「……お前は何も分かっていない。闘技者はあくまで駒だ。より強い駒を見極めるには闘いを見る必要がある。もし泉が窈君に敗れていたなら、我が社は「総力」を挙げて義武不動産を応援させてもらうつもりだったよ。」

義武「ッッ!!?」

兜馬「もっとも、御社が優勝した暁には、私を闘技会会長に指名てしてもらうつもりだったがね。覚えておけ小僧。お前とは、年季が違うんだよ。」

義武啓朗はガクッと膝を着いた。完全な敗北に……。

【浮雲】初見泉、二回戦進出
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