ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

数瞬のうちに、全ては終わっていた。仕合開始から26秒……雌雄決する。

チーター服部「始めぇぇッッ!!」

開始宣言と同時に鋭い突きが初見を襲った。紙一重で受けるも痛烈な正拳の連打に後方へと押し込まれる。攻撃と攻撃の隙間に捻じ込むように拳を払い退け、回し蹴りを仕掛けた。

【25.03sec】

大鎌を振るい抜いたような鋭い蹴りだが窈は高く飛びあがりソレを避けた。空中で二度回転しつつ急降下蹴りで初見の頭を穿った。その動きはルチャドールのベロ・アグルートその物。

【20.14sec】

初見は空中からの強襲に半身を翻すも完全には避けきれず額が裂けて鮮血が吹きだした。

小鳥遊窈の猛進は止まらない着地すると今度は截拳道の構えを取る。それは截拳道使いの中でも蹴りの達人と呼ばれたジャック・リーの動き。

【16.23sec】

上下左右、全方位から弾丸のような蹴りが撃ち放たれた、初見は歯を食いしばり蹴りを受け続けた。目の前に広がる光景はありとあらゆる格闘家が無数に向かってきている。もちろん、それは錯覚である……だが、現実でもある。

体勢が崩れつつある初見の腕に窈の手が伸びて掴んだ。一瞬の硬直から、捩じり曲げる。それは合気道の使いて植原盛並。

【10.23sec】

へし折ろうとした刹那、腕を掴んでいる側の窈が両膝を着かされた。

【7.42sec】

小鳥遊窈は、後にこう述懐している。

「あの瞬間、悟ってしまった」と。「あの状態から逆転する術は皆無」であると。

膝を着いた窈の顔面に三度の突きが着弾する。額、人中、顎……人間の頭部にある弱点への連打。

初見「【叢雲・三連】。お休みの時間だぜ物真似小僧。」

小鳥遊窈は目、鼻、口から血を吹いて倒れ伏せた。

【0.00sec】

鞘香『きッッッ!!決まったアアアアアアーーーー!!窈選手ピクリとも動かない!!』

チーター服部「勝負ありッ!!」

鞘香『第13仕合を制したのは、【浮雲】初見泉だアアアアアアッッ!!わずか26秒の瞬殺劇ッ!初見泉、強しッッッ!!』

初見「……」

当たってやるつもりはなかったんだけどな…面倒な奴だったぜ…。


選手登場口側の廊下で仕合を眺めていた小鳥遊柏が口を開く。

柏「小鳥遊窈、あの男、選択を誤ったな。最後に仕掛けた合気道の動き。アレが悪手だ。泉の戦闘styleは自身の流派、「初見流合気道」をベースに作られたもの。奴に、合気道で挑むなど無謀もいいところだ。」

金剛「仕合前の窈の発言は、少なからず初見を揺さぶっていた。上手く立ち回ればあるいは勝機が見えたかもしれない。」

そう話す二人にミッシェルと蘭が驚いた。

「「(聞こえてたの!?この場所から?!)」」

柏「優位を無に帰したのは、あの男の「過信」と「判断ミス」だ。たったひとつの綻びで、、全てを失う。それが「闘技仕合」という場所だ。」
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