ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:義武不動産控室ー

【伯爵】の本間清は手に持ったアーミーナイフを落とし両膝をついて地面へと落ちた。

目の前に立つのはどういう素材なのかは不明だが光沢があって金のラインが入った紫のスーツに金髪の坊主頭、そしてスーツと同色のアイシャドウとリップをつけた義武啓朗が腕を組んで笑った。

ちなみに、内またでなぜか小指を立てている。

義武「ホホホッ!おバカさんね。小鳥遊のオヤジの口車にまんまと乗せられたわね。私のモットーは「NO ESCAPE」降りかかる火の粉は、真っ正面から消火してやるわよ!よくやったわよアンタ達。報酬は弾んであげる。」

義武の左右には反りこみの入ったタンクトップの男【火を吹く醇風拳】後田武郎とベレー帽をかぶった長身の男【8ビートボクシング】アキ斎藤がうなずいた。

何故、今大会はルール変更をしたのか?
何故、敗退闘技者までこの島に来ているのか?
何故、島到着からトーナメントまで1日空けたのか?

導きだされる答えは一つ!

【他企業の襲撃に備えて闘技者を護衛として雇う為】

闘技者として引き抜くわけじゃないから相手もまず断らない。トーナメント参加費50億円の負債を少しでも減らしたいって意識も働くしね。

私が雇ったのは予選落ちとは言えども名の知れた闘技者。そこらのボディーガードとはレベルが違うわ。

残念だったわねぇ兜馬さん♪アナタの作戦、大失敗よ♡

そして……今の窈ちゃんは、さらに強くなっている。アンタは駆け引きも仕合も私に敗れるのよッ!!!

立見席で闘技場を眺めていた小鳥遊兜馬はその場から離れてどこかに移動し始める。その場に残った串田凛が歩いていく背中に声をかけた。

凛「あらら~普通に入場してきちゃった。裏工作は失敗みたいですね社長~。」

兜馬「……」

凛「でもどうして老人に見えたんスかね~?」

兜馬「(泉……後は任せたぞ。)」

雨は完全にあがって雲の間から日差しが降り注ぐ。

窈「雨は上がったね。残念。「雨中の決闘」は風情があって好きなんだけどな。」

初見「…何。すぐ血の雨が降るさ。……お前、いったい何モンだ?」

窈「ふふ……私かい?私は「成る者」。人は私を【貌のない男】と呼ぶ。」

初見「【貌のない男】?安いフレーズだねぇ。それに、俺にはアンタの顔がはっきり見えてるんだがね?」

窈「…ほう?本当に「見えている」か?」

初見「!?」

確かに今の今まで間違いなく顔を見ていた。もともと小鳥遊悠に似ていた顔だったのは確かなのだが……目の前に居る男の顔は【闘神】、つまり、右京山寅の顔をしていた。

それに反応したのは初見泉だけではない、観客席の最前列で観戦していた本人【闘神】右京山寅も身を乗り出した。

寅「なに……?」

あれは……「俺」?

すると窈はボクシングの構えを取ってジャブを連射してみせる。ヒュバババッと空を切り刻む拳のラッシュ。

「「「おおっー!」」」

観客たちが声を上げる中、とある大富豪の黒人がザーッと全身に汗を拭きだした。

「な……なんてこった!!」

ボクシングマニアの俺にはわかる!あれは……あの動きはッッ!!非公式ではあるもののボクシング四団体統一王者の実力を持つトラ・ウキョウヤマッッ!!

初見「……(見せかけじゃねぇ。)」

コイツの流儀はボクシング……か?

窈「……フッ。勘違いするな俺は「ボクサー以外にも成れる」で!!」

ジャブを止めて一歩前に踏み出すと今度は【格闘王】の姿に変わる。

立見席で見ていた【格闘王】大久保直也が驚きの声を上げた。

大久保「!!?アレは俺の大久保タックル!?」

末吉「(なんてネーミング!)」
29/100ページ
スキ