ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

雷鳴が鳴り響くほどの悪天候だったが次仕合の準備が終わる頃には雨脚も落ち着いてきていた。

ラウンドガールの歩ちゃんが司会の片原鞘香に近づいて報告した。

歩「お嬢~GOサインでました!」

鞘香「…うん!もうすぐ止みそうだね。それじゃあ早速始めちゃおうか~!!」

歩「はい!」

鞘香は勢いよく合羽を脱いで投げ捨てると手に持ったマイクに叫んだ。

鞘香『お待たせしましたッッただいまより!Dブロック大3仕合を開始いたしますッッッ!!!!』

「「「ウオオオオオオオッッッ」」」

他のラウンドガール達も「Dブロック」と書かれたプレートを掲げて周りを囲んだ。それに合わせて観客たちも歓声を上げる。

鞘香『まず入場するのはッ!この男ッッッ!!!闘技仕合上「最強の無責任男」!!雇用主泣かせの気まぐれさと確かな実力を併せ持つ!!あの【初見流合気道】が帰ってきた!!身長178センチ体重84キロ闘技仕合戦績39勝15敗企業獲得資産1兆4401億8280万円。小鳥遊グループ代表闘技者初見泉ンンンンッッ!!』

コケ色の作務衣姿で後ろ髪を結った男がぬるりと入場した。

初見「さあて、一働きするかい。」

【浮雲】初見泉


「初見ー!!」
「今日だけはマジメにやってくれー!」

ヤジが飛ぶのを完全に無視して初見は迷わず鞘香に声をかけた。

初見「あれ?アンタ片原会長の娘さん?大きくなったなー」

鞘香「お久しぶりでーす!」

その様子を選手登場口の廊下から眺めていたミッシェルは本当に大丈夫かという顔をした。その後ろから男の声がした。

「まさかアイツまでトーナメントに出てくるなんて。兜馬社長も、よくアイツを見つけ出したもんだ。」

振り返るとそこには小鳥遊製薬代表の小鳥遊柏に闘技者の金剛、そして城蘭がいた。

蘭「ミッシェルちゃん~」

ミッシェル「柏さん、それに金剛と城さんも」

柏「コイツ、禍谷社長とはぐれちまったらしくてなぁ……。」

蘭「偶然会った柏に保護されました。」

しょぼーんとした顔で柏を横目に見て話す城蘭。

ミッシェル「そ、そう…。そういえば従妹さんも来ているらしいけど?」

蘭「あ~城ちゃんね。まだ会ってないのよ。」

秘書二人が話を始める中、金剛と柏は登場からさっそく鞘香の肩に手を置いてナンパをしてる初見を見た。

初見「どうだい?俺と「大人の火遊び」してみるかい?」

鞘香「えー?何するんですかー??」

終始ふざけている態度ではあるが作務衣から見える胸板、二の腕などは戦闘用に仕上げられている。

柏「……よく見ておけ、初見はボケ(悠)以上に気まぐれな奴だが実力は本物だ。」

金剛「……ああ、相当だな。」

鞘香「……あっ!そろそろ呼び込みしないと!」

初見「あらら?」

鞘香は初見から離れるとマイクに向かって叫んだ。

鞘香『対戦闘技者入場!!こちらの闘技者も闘技仕合初参戦です!!柔らかい物腰とは裏腹に、どんなファイトを見せてくれるのか!?今や闘技会の名門企業となった義武不動産が、満を持して送りだすのはこの男!闘技会の台風の目である「小鳥遊」の名を持つ三人目の男!!身長180センチ体重68キロ闘技仕合初参戦!!義武不動産、代表闘技者、小鳥遊窈ウウウウウウウウゥゥゥッッッ!!』

紹介の叫びと共に雨でぬれた闘技場に入ってきたのは黒い雨具をかぶって杖をついた老人だった。

鞘香「…あれ?」

初見「ジジイ?」

近くに居たラウンドガールが慌てて駆け寄ってくる。

黒猫耳「あ、あの!」

白猫耳「ここ観客席じゃありませんよ!困ったなぁどうしよう~?」

黒猫耳「護衛者の人が送ってくれるよ。」

そう話していると小柄な老人は杖を捨てて三歩ほど前に出る。一歩すすむと腰の曲がった老人が中腰の男に、三歩目には体躯ががっしりとした若者に変貌していった。

「「「なッッッ……何イイイイィィっ!?!?」」」

鞘香「老人が突然マッチョになったアアアアアア!!?」

窈「やあ。驚いてくれた?」

【貌のない男】小鳥遊窈
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