ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

未だ止まぬ雨の中でも闘技場は熱気を帯びていて観客たちは傘をさしたり、合羽を着たりとほとんどの人間は席から立とうとしない。

そんな中、司会実況の鞘香の声が響く。

鞘香『さあ!いよいよDブロック開始ですが、その前に!!準備のため小休止を挟ませていただきます!もうしばしお待ちください!!』

ラウンドガールたちも合羽を着て「休憩」と書かれたプレートを掲げている。

「早くしてくれー!」

「もう待ちきれないよー!」

そんなヤジも飛ぶ観客席で周防製鉄社長の周防みほのは赤い傘をさして最終ブロックの始まりを待っていた。

会社倒産の危機を逃れた彼女は、その後も「賭け」を続けていた。

凍夜-目黒戦こそ予想を外したもののその後、4戦連続的中。

凍夜(○)-目黒(×)-200万
関林(○)-鬼王山(×)+100万
サーパイン(○)-賀露(×)+300万
根津(×)-雲山(○)+1400万
刹那(○)-二階堂(×)+200万

実に、1800万円もの利益を手にしていた。

みほの「(……私、ギャンブルの才能あるかも♪)」

ルンルン♪っと彼女は調子に乗っていた。


闘技ドーム内の一室、明かりもつけずに数人の人間が広くはない小部屋で声を落として話している。

簡素な椅子に腰かけた品のいいスーツを着た男、小鳥遊グループ社長の小鳥遊兜馬が口を開いた。

兜馬「今更言うまでもなかろう?私の望みは分かるな?前金は既に振りこみ済み。残りの金を手に出来るかは、お前の働き次第だ。」

目の前にはフサフサの黒いひげを蓄えた筋肉質で巨体な男が立っている。黒いブーツに軍パンにピッチリとしたブラックインナーにアーミーキャップという軍人か特殊部隊のようないで立ち。

【伯爵】本間清(ほんまきよし)

本間「……会ったこともないアンタには関係ないことだ。私が何をしようと自主的な行いに過ぎない。私の「行為」によって、アンタが、「何らかの利益」を得たとしても、私の知ったことではない。アンタとは「今までもこれからも」一切面識がないのだから。」

そう言って【伯爵】は踵を返しドアを開けて出ていった。部屋に残った兜馬の背に女性の声がかかる。

「本間清。外人部隊上がりの殺し屋を雇うなんて、いい趣味してますね。義武社長を襲わせて危険を強要。らくらく二回戦に進出ってわけッスか。あんな奴を雇うなんて、東洋電力を悪く言えないッスよ。」

松永工業【秘書代理】串田凛が珍しく糸のように細い目を開いて兜馬を見る。

兜馬「……優勝する確率を可能な限り上げる。私は、為すべきことをするまでだ。紅君が敗れ、悠が危うい状況の今、手段を問うている余裕はない。」

そのころ、小鳥遊グループ【秘書】兼【精鋭】のミッシェル・B・ソルトがドアの前で仁王立ちしていた。そのドアには紙が貼りつけられていて「立ち入り禁止(女の子は入ってもいいよBy初見)」とふざけた似顔絵付きで書かれている。

ため息をついてゴンゴンッと強いノックをしてドアを開けた。

ミッシェル「入るぞ。初見そろそろ入場時刻……!?」

真っ暗闇の部屋の中央で両手を合わせて直立している初見の背中が見えた。流麗だが発せられているその闘気は今まで接してきた者とはまるで違う雰囲気を纏っていた。

初見「……おっと、もう出番か。そんなじゃまあ、行きますか。」
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