ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

二階堂蓮は胸を抑えながら立ちあがる。

ま……まさか……あの瞬間、拳を打った瞬間に、撃たれていたというのか!?

あり得ん!!催眠は、確実にかかっていた!あの一瞬で催眠を催眠を解いたのか!?いや……そんなはずは……。

刹那「ハァアア……」

雨に打たれ、かろうじて立っている様子だった刹那がハッキリとした深呼吸をした。

立見席から身を乗り出すようにして小鳥遊悠が桐生を睨む。

悠「あいつ…」

何だ!?変わった……?

刹那「……礼を言うよ。懐かしい夢を見た。とても懐かしい夢を……ボクが背負った「罪」…………知ってるかい?人は「幸福になるべき者」と「そうでない者」がいる。ボクは、後者の人間だ。キミも、僕の「罪」になってくれるかい?」

二階堂蓮が呼び起こしたもの……

もう一人の【阿修羅】覚醒

蓮「!?」

雰囲気が変わった!?……惑わされるな!奴の催眠は、まだ解けていない。叩きこんでくれる。我が全霊の「剄」!

二階堂蓮は一呼吸おいて真っ正面から攻めた。動く右腕に全力を乗せた一撃を刹那の胸へと叩きこんだ。

着弾した拳がめり込み胸の皮膚が肉が波打つ……が、ボッと音を立てて刹那が二階堂の側面へと回りこんでおり。トンッと人差し指で頭を軽く突いた。

刹那「それはもう見た。痛いのは嫌いなんだ。あまりいじめないでよ。」

蓮「ッ……!!?」

こ…コイツッッ!!俺の剄を受け流した!?

刹那「ほら、次の技を出しなよ。もしかしたらボクを倒せるかもよ?」

余裕の笑みでそう語る桐生刹那に二階堂は憤慨した。横薙ぎの手刀で払うも上半身をわずかに反らしてそれを避けた。さらに敵を追いながら鋭い手刀を連続で打ち放つ。

【天狼拳・嵐】

鞘香『二階堂選手、高速ラッシュで畳みかけるッッ!!しっ、しかしこれは!!桐生選手にいまだ届かずッッッ!!』

揺れるような、舞のような、まるで幽霊でも相手しているように攻撃が一切当たらない。

蓮「クソォっ!!」

叫びをあげて手刀を打ってくる、刹那は向かい来る手刀を下から撫でるように払った。すると二階堂の身体が空を舞った一回転して地面に落ちた。

悠「!?」

城「あの技って……悠さんの!!?」

仰向けに投げだされた二階堂の胸に刹那の足が落ちた。

刹那「アハッ♪よく似あってるね。弱者は、地面を這っているのがお似合いだよ。ねえ?恥ずかしくないの?ボクに一矢報いることもできないなんて。」

足の五指にわずかに力を込めてわざとらしく腹筋を刺激した。羞恥と怒りが混ざった表情で刹那を睨み、右手で地面を打って真上に鋭い蹴りを打ち上げる。

【天狼拳・背地背水脚】

しかし、刹那は容易にその蹴りを避けた。

大きく跳ねあがって空を舞って距離を話し着地した二階堂は叫んだ。

蓮「舐めるなよ桐生刹那!勝負はこれからっ……」

「だ」っといい始める寸前、離れた位置に居たはずの刹那が背後に現れぴったりとくっついて肩から腕を回して胸に手を添えていた。

刹那「最後に教えてあげる。狐影流には、名のつく技が二つしかないんだ。一つは【瞬(またたき)】たった今、君の背後を取った技だよ。そしてもう一つの技は……今、味わわせてあげるよ。」

もはや闘う闘わないの問題ではない。今、背後に居る化け物に生命与奪を権利を握られている。二階堂蓮は恥も外聞もなく叫んだ。

蓮「まっ、待て!参っ…」

トンッと胸を捉えていた刹那の手が動いた。

刹那「【狐影流:羅刹掌】衝撃をねじり込む打撃だよ。」

皮膚が肉が捩じれ、その先にある臓器、心の臓も捻じれていき二階堂蓮は口から大量の血液を吐きだして膝をついた……。

鞘香『ダッ……!!ダウウウウウウンッッッ!!二階堂選手、吐血と共に崩れ落ちたアアアアアアッッ!!!』

アンナ「二階堂ッ!おいッ!!二階堂!??……勝負あり!!」

レフリーアンナが近づいて二階堂蓮の戦闘続行を確認しようとしたが一目見て不可能と判断して仕合終了を宣言した。

鞘香『と、止めたーーーー!!!美形対決を制したのは【美獣】桐生刹那だアアアアアアッッ!!!』

アンナ「急いで運んでくれ!」

タンカに乗せられて運ばれて行く二階堂。刹那はもはや興味がなくなったように視線を別の方へ向けていた。

ハハ…何でかな?久しぶりに「素」を出したくなっちゃった。もしかして……君に見られて、昂っちゃったかな?待ちきれないよ悠君。

小指だけを立てた拳を口元に近づけてチュッとモーションを向けた。

そして視線の先に居る男、小鳥遊悠は掴んでいた壁の淵を握りつぶした。

……おれもだぜ、桐生刹那!!
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