ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

昭和12年(1937)中国……日露戦争開戦。

「彼等」は、戦禍の中に突如として現れた。

正体不明の拳法で中国軍を圧倒。日本軍の躍進に大きな貢献を果たした。

「彼等」の名は……天狼衆(てんろうしゅう)。

闘技場に続く廊下で四名の男女の視線がひとりに注がれていた。そして、チャイナドレスの女性が折りたたまれた服を恭しく差し出した。

「殿、刻限にございます。戦装束をお召しください。」

その隣では顔に大きな傷がある大柄の老人が傅いた。

「御武運を…」

全員を一瞥すると二階堂蓮は納得したように戦装束を受け取りひとりひとりに声をかけていく。

蓮「…うむ。時は来た。蔡(ツァイ)、指揮は任せたぞ。」

顔に傷のある大柄の老人が返事をする。

蔡「御意」

蓮「期待しているぞ、梅(メイ)」

薄桃色のチャイナドレスの女性が返事をする。

梅「身に余るお言葉…」

蓮「黄(ファン)、万一の時は頼むぞ。」

黒い上下のアオザイで眼鏡をかけたやや小柄な男が返事をする。

黄「はい。全ては殿の御為に。」

蓮「炎(イエン)、くれぐれも先走るなよ。」

タンクトップにカンフーパンツで目つきの悪い若者が返事をする。

炎「へっ。お見通しですか。」

全員の意思を確認すると二階堂蓮は平然といま着ている服をすべて脱ぎ棄てていった。

蓮「よし…………行くぞ、同胞たちよ。我等「天狼衆」……生きて再び会おうぞ。」



闘技場の観客席で皇桜学園の理事長、奏流院紫苑が頭を抑えながら近づいてくる女性に声をかけた。

紫苑「おう松田。どこに行ってたんだ?」

秘書の松田智子がうーんと唸りながらいった。

智子「いや、それが記憶があいまいで……モッキーの夢を見たような…………あれ?なんだか空が…せっかくドームの天井、開けたのに……」

ついさっきまで日の光を降ろしていた空が黒い雲に覆われだしている。

紫苑「ああ。こりゃ一雨降りそうだ。」

そう話していると司会の片原鞘香が闘技場の中心でマイクに叫んだ。

鞘香『選手、入場!!謎の男が台湾からやってきた!正体不明にして容姿端麗!!ミステリアスチャイニーズファイターが闘技場に舞う!!身長174センチ!体重73キロ!闘技仕合初参戦!白夜新聞!!二階堂蓮ンンッ!!』

「「「キャアアアアァアアアッ!!」」」」

黄色い悲鳴が埋め尽くした。

闘技場に出てきた蓮は首と胸元だけのタンクトップよりも布面積の小さい黒い独特のアオザイに指抜き手袋ならぬ肘の辺りまでの袖、そしてこれまたホットパンツぐらい小さな布面積のカンフーパンツと足首から膝したまでの足布……要するに長袖長ズボンから肩から二の腕、胸から腰、太ももからひざ下までの布がないというかなり独特の戦装束だ。

「蓮~!」
「二階堂蓮さ~ん!」
「蓮さま~♪」
「こっち向いて~!」
「蓮~!」

鞘香『これはすごい!割れんばかりの黄色い声援!声援!デビュー戦の闘技者とは思えない人気ぶりです!!』

【番人】二階堂蓮

二階堂蓮を見た智子は叫びをあげた。

智子「なんじゃあのわいせつ物はッ!!!」

紫苑「何だよ、オイ!?」

【氷帝】の氷川涼は立見席から不満気にこぼす。

氷川「ケッ!気にいらねえ。プレイボーイ気取りだぜ。」

その背後で末吉と悠がどの口が言うんだという目で見ている。

鞘香『続いて登場するのは、この男だ!!謎だらけなのはこの男も同じ!彗星のごとく現れ、トーナメントに出場!!美しき獣がトーナメントに降臨だ!!身長180センチ!体重75キロ!闘技仕合戦績1勝0敗!企業獲得資産250億7200万円!!皇桜学園グループ!!桐生刹那アアアッッッ!!』

こちらは上半身裸で下半身は黒いズボンというシンプルないで立ち。

【美獣】桐生刹那
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