ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【5】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

仕合が始まってものの数分もしないうちに見せつけられる圧倒的な強さ。

その力量に観戦していた城がしぼりだす様な声を出す。

城「うッッッ……うそですよね……?」

糸目の金田すら目を見開いていた。

末吉「あれは……空手?オリジナルの格闘技?」

氷川「…一見ハンドポケットっていう我流(オリジナル)にも思えるが骨格は空手だな。……ただ、今まで見てきた空手が健康体操に見えるぜ。「ハンドポケット」と「空手」を組み合わせた上で「完成度が異常」なんだ……!」

【格闘王】の大久保直也は太い腕を組んで真顔でいった。

大久保「あー……これはアレやな…まさしくアレや。悠も分かるやろ?」

悠「……」

俺、表の世界ではけっこう強いって評判やねん。てゆーか、総合の王者なんやけど。長いこと闘ってると感じるようになるねん。

「あ。コイツヤバい奴や」って……。

大久保「……俺の危険センサーがギュルンギュルンゆうとるわ。紅には悪いけども、あの兄さんは「無理」や……。」



紅は立ちあがる。その間、氷室薫は追撃も何もせずにジッと見つめていた。

紅「ッ……テメエ!寸止めばかりで何のつもりだよ!?」

氷室「…紅さんは格段に強くなっています。この場に単身で立っているのが何よりの証拠です。きっと崇も驚いていることでしょう。ですが……降伏していただけませんか?力量の差を認めることは恥ではありません。」

紅「っ~~…………へっ!笑えるぜ。どいつもこいつも、俺を舐めやがって!みくびるんじゃねえ!!!」

何度倒されようと動けるのならば、闘えるのならば、どんな敵が相手でも止まりはしない。紅は変わらずに猛進する。

それでも、射程内に入った瞬間、抜かれていた。紅は顎を押し捕えられ後ろに退かた。

氷室「見くびってなどいませんよ。相応の評価です。……ん?」

すると腹部に違和感を感じ視線を下げると紅の手がシャツの一部を引っ掴んでいた。撓った竹のように無理やり上半身を前に戻して右腕を振りぬいた。瞬間、鎖骨のあたりから胸元にかけて服もろとも皮膚が裂け鮮血が舞った。

鞘香『出血ウウウウウッッッ!!!伝家の宝刀!【スカーレット・エッジ】が炸裂だアアアアアアーーーー!!!!』

紅「タダで転がされると思ったかい?ようやく掴めたぜアンタの動き。」

氷室「ほう…これは……評価を改めねばなりませんね。」

真っ白なシャツの切られた部分は赤く染まっているがその傷は薄皮が裂けた程度だ。

紅「へっ!遅せーんだよ!」

クソッ!まだ浅い。こいつを倒すには、もっと深く斬らねぇと……。

氷室「なるほど……【斬撃】、いや【捻じ切り】……ですかね。分かりました。受けましょう。」

傷口をひと撫ですると両手を鞘(ポケット)に収めて、僅かに腰を落とす。堂に入る。今までは「片」の「抜拳」だったが、これからは「両」の「抜拳」に移行したのだ。
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